環境問題

食品ロスとは?事業系食品ロスの現状と政府の新たな対策をご紹介

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食品ロスとは?事業系食品ロスの現状と政府の新たな対策をご紹介

日本政府は、事業系食品ロス量を60%削減するという新たな目標を設定しました。これは、2030年度の目標を8年前倒しで達成したことを受けたものです。しかし、食品ロスの問題は依然として環境への影響、経済的な損失、社会的な問題など大きな課題となっています。この目標を達成するためには、企業が製造から消費までの各段階で廃棄物の削減を図り、環境負荷の軽減や経済的効率の向上を目指すことが重要です。ここでは、食品ロスの現状を知り、事業系食品ロスの新たな目標について期待される取り組みなどをご紹介します。具体的なアプローチを策定し、持続可能な未来に向けて食品ロスの削減に取り組みましょう。

INDEX

事業系食品ロスの現状

事業系食品ロスの現状は、事業系企業が直面する大きな課題の一つです。ここでは、食品ロスの意味や事業系食品ロスの現状について見ていきます。

食品ロスとは

食品ロスとは、本来食べられるはずなのに廃棄されてしまう食品のことです。この食品ロスは、生産から消費までのフードサプライチェーンの各段階で発生します。例えば、生産では収穫量が多すぎたり、形が悪い(規格外)ために廃棄されることがあります。製造では、需要を上回る製造やパッケージの印字ミス、破損による返品が原因で廃棄されることがあり、配送の段階では、売れ残りやパッケージの破損による廃棄や返品が発生します。そして、販売では小売店でのパッケージの破損や売れ残り、飲食店での作りすぎや客の食べ残しが原因で廃棄されます。最終的に、家庭でも使い忘れや食べ残しによって廃棄されることがあります。

出典:農林水産省『令和4年度の事業系食品ロス量が削減目標を達成!』(2025/06/21)

出典:消費者庁『令和6年度版食品ロス削減ガイドブック』p,6.7.(2024/08/21)

事業系食品ロスの状況

2016年度の推計によると、日本国内の食品ロス量は年間643万トンです。これは、2018年の国連世界食糧計画(WFP)による食料援助量約390万トンの1.6倍に相当します。事業系の食品ロスが352万トン、家庭系の食品ロスが291万トンを占めています。事業系の食品ロスの内訳では、食品製造業と外食産業がそれぞれ約4割を占めています。しかし、令和4年度の食品ロス量は472万トンで、前年度比で51万トン減少しました。このうち、事業系の食品ロスは236万トン(前年度比43万トン減)、家庭系の食品ロスは236万トン(前年度比8万トン減)となっています。

食品ロス量の推移(平成24~令和4年度)

食品ロス量の推移(平成24~令和4年度)

出典:農林水産省『食品ロス量の推移(平成24~令和4年度)』(2024/06/14)

出典:農林水産省『令和4年度の事業系食品ロス量が削減目標を達成!』(2025/06/21)

出典:消費者庁『食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針 令和2年3月 31 日 閣 議 決 定』p,6.(2020/03/27)

事業系食品ロスによる問題

事業系食品ロスによる問題には、環境への影響、経済的な損失、社会的な問題などがあります。ここでは、それぞれの問題について見ていきます。

環境への影響

日本の食料自給率はわずか38%です。このため、多くの食料を海外から輸入していますが、その一方でたくさんの食品ロスを出しています。このため、船舶や飛行機による輸送中に二酸化炭素(CO2)が排出され、さらに廃棄される際に発生するCO2が環境に影響を与えます。そして、2022年度の食品ロス量の472万トンを基に推計すると、食品ロスによる温室効果ガスの排出量は合計で1,046万トンのCO2に相当します。この量は、令和4年の家庭の用途別CO2排出量と比較すると、暖房用の3,080万トンに次いで大きな規模です。

出典:消費者庁『令和6年度版食品ロス削減ガイドブック』p,9.(2024/08/21)

出典:消費者庁『令和6年度食品ロスによる 経済損失及び温室効果ガス 排出量に関する調査業務 調査報告書』p,8.(2024/08/30)

経済的な損失

日本では、食品ロスを含む一般廃棄物の処理費用に年間約2兆円が使われています。2022年度の食品ロス量(472万トン)を基にすると、食品ロスによる経済損失の合計は約4兆円になります。これを国民一人あたりに換算すると、年間で32,125円、一日あたり88円となり、毎日おにぎり約1億個分のお金を失っていることになります。さらに、4兆円の経済損失は、令和4年の農業・食料関連産業の市場規模である12.7兆円の約3分の1に相当します。

出典:消費者庁『令和6年度版食品ロス削減ガイドブック』p,9.(2024/08/21)

出典:消費者庁『令和6年度食品ロスによる 経済損失及び温室効果ガス 排出量に関する調査業務 調査報告書』p,7.(2024/08/30)

社会的な問題

日本では、子供の貧困が深刻で7人に1人が貧困状態にあるとされています。これは依然として高水準です。また、世界では約8億人が飢えや栄養不足に苦しんでいると推計されています。そして、2015年に国連で採択された持続可能な開発のための2030アジェンダに基づく持続可能な開発目標(SDGs)では、「目標12.持続可能な生産消費形態を確保する」において、食料廃棄の減少が重要な柱とされています。さらに、世界中でも、人口が急増し、深刻な飢えや栄養不良の問題がある中で、大量の食品が廃棄されているのが現状です。SDGsでは、この食品廃棄の削減が重要な課題となっています。

出典:消費者庁『食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針 令和2年3月 31 日 閣 議 決 定』p,5.6.(2020/03/27)

2030年度までに60%削減を目指す

持続可能な未来を築くために、食品ロスの削減は不可欠な課題です。これまでの取り組みにより、日本は一定の成果を上げてきましたが、さらなる努力が求められています。

新たな事業系食品ロス削減目標

第2次食品ロス削減の推進に関する基本的な方針(案、令和7年3月変更予定)では、新たな目標として事業系食品ロス量を60%削減することが設定されました。これにより、食品関連事業者の取り組みとして、納品期限の見直しや賞味期限の安全係数の見直し、大括り表示への見直しを進めていきます。また、食べ残しを持ち帰る際の留意事項について「食べ残し持ち帰り促進ガイドライン」に基づき、食べ残しを持ち帰る際の注意点を周知し、さらにmottECOの導入事例から得た知見やノウハウも共有します。また、「食品期限表示の設定のためのガイドライン」の改正内容を広く周知し、それに基づいた取り組みを促進します。

出典:消費者庁『《食品ロスの削減の目標》』p,1.(2024/12/20)

新たな事業系食品ロス削減目標が設定された背景

第1次食品ロス削減の基本方針では、家庭系食品ロスと事業系食品ロスの両方を2000年度比で2030年度までに半減させるという目標が設定されました。この方針により、持続可能な社会を目指す取り組みが進められてきました。2022年度の最新データによると、家庭系と事業系の食品ロス量はそれぞれ236万トンとなっています。特に事業系の食品ロスについては、2030年度の目標を8年前倒しで達成しました。この成果は、食品業界全体での努力が実を結んだことを示しています。これを受けて、第2次基本指針では、新たな目標として食品ロス量を60%削減することが設定されました。これにより、さらに一層の食品ロス削減に向けた取り組みが強化されることが期待されています。

出典:消費者庁『《食品ロスの削減の目標》』p,1.(2024/12/20)

政府による食品ロス対策の新たな取り組み「食の環プロジェクト」

最近、食品アクセスの問題が明らかになっています。こうした問題に対処するため、政府は「食の環プロジェクト」を発足させました。

「食の環プロジェクト」とは

「食の環プロジェクト」とは、食品ロス削減、食品寄附促進、食品アクセスの確保を総合的に進めるための取り組みです。消費者庁は2024年6月に、関係府省庁や地方公共団体が連携して、この3つの施策を実施するために「食の環」という名称を採用しました。これにより、食品の無駄を減らし、寄附を促進し、すべての人が食品にアクセスできる社会を目指しています。

出典:みんなで広げよう! 消費者庁『「食の環」プロジェクト』p,1.(2024/12/20)

「食の環プロジェクト」発足の背景

最近では、経済的な理由で十分な食料を手に入れられない方や、買い物が難しい方が増えているのが現状です。このような食品アクセスの問題が表面化してきており、どんな時でもすべての人が食料を手に入れ、健康的な食生活を送れるようにすることが重要です。そして、「食の環プロジェクト」の発足には、「食料・農業・農村基本法」が25年ぶりに見直されたことが背景にあります。この見直しでは、「食品アクセスの確保」という新しい考え方が明記されました。具体的には、低所得者や交通手段がない人々などが、健康的な食生活に必要な食品を十分に手に入れることが難しい状況を指します。こうした人々が食品を確保できるようにするため、政府が積極的に取り組む必要があるとされています。

出典:消費者庁『「食の環(わ)」プロジェクトの取りまとめとその発信について(関係府省庁申合せ) 概要』p,1.2.(2024/12/16 )

事業系食品ロス削減に期待される取り組み

最後に、事業系食品ロス削減に期待される取り組みや企業事例をご紹介します。

食品ロス削減プログラムの推進

食品ロスを削減するためには、製造から販売、消費までの過程で食品廃棄物を減らす取り組みが必要です。具体的には、企業が排出抑制の取り組み内容を公表し、食品関連事業者、消費者、行政が課題と解決策を共有することが重要です。また、1/3ルールや納品期限、賞味期限、安全係数、まとめた表示に関する見直しを進める必要があります。これらの取り組みを通じて、企業や社会全体で食品ロスを減らし、持続可能な食の環境を実現していくことが求められています。

出典:消費者庁『食品ロス削減目標達成に向けた施策パッケージ概要』p,8.(2024/07/01)

外食時の食品ロス削減のためのテイクアウト推奨

外食産業における食品ロス(食品廃棄物)の多くは食べ残しによるものです。これを踏まえ、食べきりの取り組みや食べ残しの持ち帰りを促進することが重要です。具体的には、外食時に食べきれる量を注文するよう促すキャンペーンや情報提供を行い、食べ残しを持ち帰る文化を定着させるために外食事業者と消費者の意識と行動を変える必要があります。食事の持ち帰りに関する法的責任は消費者の自己責任を前提としており、国は民事上のトラブルを避けるためのガイドラインを作成し、広く周知しています。さらに、食品衛生に関するガイドラインも作成し、保健所設置自治体や飲食店業界に広めています。これにより、消費者と事業者の双方が安心して食事の持ち帰りを行える環境が整えられています。

出典:消費者庁『食品ロス削減目標達成に向けた施策パッケージ概要』p,7.(2024/07/01)

食品寄附の促進による貧困層への支援

食品事業者からフードバンク等への未利用食品の提供を促進することで、2030年度までに2000年度比で事業系食品ロス量を半減(273万トン減)することを目指しています。そして、フードバンク団体を通じて食品提供を円滑にし支援を強化することは、食品ロスを減らし、必要な食べ物を十分に入手できない人々を支援するために重要です。具体的な取り組みとして、フードバンクの体制強化、食品寄附の促進、フードドライブ、そして地域の課題解決に向けた連携が挙げられます。これにより、食品のマッチングがスムーズに行われ、社会的な問題解決にも貢献します。

事業イメージ

alt属性:事業イメージ

出典:農林水産省『フードバンク活動の推進』p,11.(2024/11/11 )

出典:消費者庁『食品ロス削減目標達成に向けた施策パッケージ概要』p,6.(2024/07/01)

フードシェアリングサービス(株式会社G-Place)

環境関係事業のサービスを展開する株式会社G-Placeは、地域事業者と地域住民をつなぐことで、食品ロスの削減、環境活動への参加、お得な食品の購入を可能にする地方公共団体向けのフードシェアリングサービス「タベスケ」を開発・運営しています。このサービスには、地域の食品ロス削減に協力する飲食店や小売店、そして住民などのユーザーが参加登録を行います。店舗側は、期限が迫っている食品や食品ロスになりそうな食品をタベスケに登録し、ユーザーは希望する食品を予約購入します。ユーザーは予約した食品を店舗に取りに行きます。参加登録は無料で、食品ロスを削減しつつ収益も確保できます。これにより、食品ロス削減という社会貢献をしながら、お得に食品を購入できる仕組みが実現します。

出典:消費者庁『フードシェアリングサービスタベスケ みんなの「食べる」をつないで「助ける」』p,1.(2022/09/13)

気象データを活用した商品需要予測サービス(一般財団法人日本気象協会)

気象業務を行う一般財団法人日本気象協会は、天気予報で培った解析技術を活用して商品の需要予測を行い、食品メーカーの生産量調整や小売店の仕入れ見込みをサポートすることで、食品ロス削減に貢献しています。2017年に「商品需要予測事業」を開始し、SNSの気温に関するつぶやきデータを基にした「体感気温」を使って、精度の高い需要予測を実施。その結果、寄せ豆腐で約30%、冷やし中華つゆで約20%の食品ロス削減に成功しました。また、気象データを活用した需要予測情報をメーカーと小売業者に共有し、従来の「見込み生産」から「受注生産」へ変更することで、さらに食品ロスを減らしています。さらに、小売業向けの商品需要予測サービス「売りドキ!予報」を展開し、商品の売れ時を事前に把握して製造量や仕入れ量を調整することで、食品廃棄を防ぎつつ地球環境の保全にも貢献しています。

出典:消費者庁『気象データを活用した商品需要予測サービスで食品ロス削減のサポート』p,1.(2019/11/27)

Aramark(アメリカ)

食品加工やフードサービスを展開するAramarkは、全体的な食品管理プロセスを活用し、メニューの作成、顧客分析と予測、無駄のない材料調達・材料管理、廃棄食品の追跡を行っています。そして、事業から出る食品ロスを 100%削減することを目標に掲げており、事前に何をどれだけ準備するかをより正確に判断することで目標達成を目指しています。 また、クライアントと連携して堆肥化プログラムを実施し、埋立地にいく食品ロスを削減すると同時に、食品ロスをフードバンクなどの食品寄附に回す努力も行っており、年間でおよそ 4.5 トンもの食料を寄附しています。2020年には予想外のロスが発生するものの、それらのおよそ 7.9 トンもの食品を寄附しました。

出典:消費者庁『諸外国における食品ロス削減に関する 先進的な取組についての調査業務 報告書』p,13.(2022/06/27)

THE SHIP INN(イギリス)

カンブリア行政区画にあるレストラン「THE SHIP INN」では、廃棄食品の量を計測し、1日あたり約13.5キロ(年間約2.8トン、金額にして3,418ポンド)を廃棄していることが分かり、さらに食品の製造に必要なエネルギー、水、貯蔵設備、人件費を含めると総額は約6,040ポンドに上ることが判明しました。廃棄食品の内訳は、13%が腐敗、21%が調理準備過程でのゴミ(特に皮むきの作業)、66%が戻された皿に載っていた食品ロス(チップス、付け合わせ、ソース)でした。そこで、対策としてカット済みの野菜やチップスを使い準備段階のロスを80%削減、また、皿に盛るチップスやソースの量を減らし、必要であれば追加を客に求めることでプレートのロスを67%削減することができました。結果的に、全体として店舗の食品ロスを72%以上削減し、年間で約2,454ポンドの節約が見込まれます。

出典:消費者庁『諸外国における食品ロス削減に関する 先進的な取組についての調査業務 報告書』p,57.(2022/06/27)

まとめ:事業系食品ロスの新しい目標に貢献して持続可能な未来のリーダーを目指す

食品ロスの削減は、企業にとって避けては通れない重要な課題です。令和4年度の事業系食品ロス量は472万トンに達し、前年度より51万トン減少しましたが、依然として環境への影響や経済的損失、社会的な問題は深刻です。日本では、事業系食品ロス量を60%削減するという目標が掲げられています。これを実現するには、製造から消費までの各過程で食品廃棄物を減らす取り組みが必要です。特に外食産業においては、食べ残しが大きな問題となっています。食べきりの取り組みや、食べ残しの持ち帰りを促進することが重要です。また、フードバンクを通じた食品提供の円滑化と支援強化も不可欠です。こうした取り組みにより、食品ロスを減らし、必要な食べ物を十分に入手できない人々を支援することができます。持続可能な未来を築くためには、食品ロスの削減が欠かせません。企業はさらに努力を重ね、より良い社会を目指しましょう。

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