2024年の世界平均気温が過去最高となった件について、わかりやすく解説します。地球温暖化が進んでいると以前より言われていますが、このようなニュースを聞くと身近な問題として改めて実感します。気候温暖化はさまざまな自然災害の原因と考えられるだけでなく、経済や社会にも深刻な影響を与えています。本記事では2024年の世界平均気温が最高となった原因や影響、気候変動に関する国際的な取り組み、2024年度に発生した世界各地の気象災害などについて取り上げます。
INDEX
2024年の世界平均気温
2024年、世界の平均気温は過去最高となりました。その根拠となる情報について解説します。
「コペルニクス気候変動サービス」が発表した衝撃の内容
コペルニクス気候変動サービスは、2025年1月10日に「2024年は世界の観測史上最も温暖な年であり、世界の平均気温が産業革命前の水準を1.5°C上回った初めての年である」と発表しました。コペルニクスとは欧州連合による全地球の環境監視と安全保障が目的の地球観測プログラムで、気候変動サービスは6つあるコペルニクスのデータソースのひとつです。同サービスによると、2024年の世界の平均気温は15.10°Cで、それまでで最も暑い年であった2023年を0.12°C上回っています。特に2024年7月22日には世界の日平均気温が17.16°Cで過去最高を記録。1850年代対比の気温上昇は1.60℃に上り、1.5度以下というパリ協定の目標達成が危ぶまれる水準となっています。
出典:Copernicus「2024 is the first year to exceed 1.5°C above pre-industrial level」(2025/1/10)
出典:Copernicus「データプラットフォームサービスについて」p2-3
日本の気象庁も「過去最高」と報道発表
日本の気象庁も2024年12月の時点で、「世界の年平均気温も、これまでの1位の記録(2023年)を大きく上回って統計開始以降最も高い値となる見込みです」と報道発表しています。それによると1991-2020年平均気温からの差を示す気温偏差は+0.62となり、2023年の+0.54を大きく上回りました。
出典:気象庁「2024年(令和6年)の天候のまとめ(速報)」(2024/12/25)
世界平均気温が2024年に過去最高となった原因や影響
世界平均気温がこのように上昇しているのは、偶然ではありません。気温上昇の原因や影響について解説します。
温室効果ガスの増加
2024年の気温上昇の主要因は、人間の活動の結果として大気中の温室効果ガス(GHG)の濃度が上昇していることです。特にCO2濃度は422ppmと、2023年より2.9ppm高くなっています。コペルニクスのデータは、温室効果ガス排出量が世界的に増加していることを示しています。また日本の環境省、国立環境研究所、JAXAも、温室効果ガスを観測する人工衛星「いぶき」の観測より、CO2の地球全体の平均濃度が2023年から2024年にかけて2011年以降の14年間で最大の増加量である3.5 ppm/年になったことを発表しています。
出典::Copernicus「2024 is the first year to exceed 1.5°C above pre-industrial level」(2025/1/10)
出典:環境省「地球全体の二酸化炭素濃度の年増加量が過去14年間で最大に ~いぶき(GOSAT)による2024年の観測速報~」(2025/2/6)
海面水温の上昇
海面水温の上昇も、気温上昇要因となります。2024年の年間平均海面水温は20.87°Cと過去最高を記録し、1991年から2020年の平均を0.51°C上回りました。高い海面水温となった要因の1つはエルニーニョ現象ですが、2024年はエルニーニョ現象が終息した後も多くの地域で異常に高い海面水温が発生し続けました。
出典:Copernicus「2024 is the first year to exceed 1.5°C above pre-industrial level」(2025/1/10)
異常気象の発生
世界中の気温上昇にともない、大気中の水蒸気の総量は2024年に過去最高を記録し、1991~2020年の平均を約5%上回りました。この豊富な水分供給により、異常な降雨現象の可能性が高まり、海面温度の上昇と相まって、熱帯低気圧などの大規模な嵐の発生にもつながっています。2024年には、世界中で異常気象が観測されました。
出典:Copernicus「2024 is the first year to exceed 1.5°C above pre-industrial level」(2025/1/10)
気温上昇がもたらす人類への影響
世界の平均気温上昇は、社会や経済にも大きな影響をおよぼします。気温上昇が人類へ与える影響について解説します。
経済・社会への影響
気温上昇によって、特に第一次産業は深刻な影響を被ります。水稲の収穫量低下、病害虫の大量発生、乳用牛の日射病発生、採卵鶏の熱死・採卵率低下、漁獲量の低下などが実際に報告されています。地球の気温上昇は食糧生産に、大きな悪影響をおよぼしているのです。
出典:農林水産省「農林水産分野における気候変動への適応に関する取組」p4–5(2025/2)
健康への影響
気温上昇は、私たちの健康にも影響があります。猛暑による熱中症や水・食物・蚊の媒介による感染症が、既に増加傾向にあります。さらなる気温上昇で、熱中症に関連する心血管疾患による死亡者数の増加も予想されています。またインフルエンザや手足口病、水痘、結核といった感染症についても、気候変動に伴い季節性や発生リスクが変化する可能性が指摘されています。
出典:国立研究開発法人国立環境研究所「各分野の気候変動影響と適応 健康」
インフラへの影響
気温上昇に伴う極端な気象現象は、インフラ機能の破壊や停止につながります。特に人口が集中する都市域では、極端な降水や洪水、地滑り、大気汚染、干ばつ、水不足などが、大きなリスクとなっています。
出典:WWFジャパン「地球温暖化が進むとどうなる?その影響は?」(2019/12/12)
2024年に世界各地で発生した気象災害
2024年には、世界各地で気温上昇に伴う気象災害が発生しました。そのうちのいくつかをご紹介します。
中国南部~東南アジアの台風
中国南部~東南アジアでは、台風第3号(7月)、台風第11号(9月)、台風第20号(10月)や大雨の影響により、合計で1,240人以上が死亡したと伝えられています。特にフィリピンでは各地で7月から10月にかけて、平年の2倍~2.6倍の降雨量が確認されました。
出典:気象庁「2024 年(令和 6 年)の世界の主な異常気象・気象災害(速報) 」p2(2024/12/25)
スペイン東部の大雨
スペイン東部では、10月の大雨により220人以上が死亡したと伝えられました。スペイン東部のレ リダでは、10月に106mmと平年の約2.6倍の降水量が観測されています。スペイン気象局は、スペインの降水量が10月としては1961年以降で最も多かったと発表しました。
出典:気象庁「2024 年(令和 6 年)の世界の主な異常気象・気象災害(速報) 」p4(2024/12/25)
米国南東部のハリケーン
米国南東部では、9月のハリケーン「HELENE」の影響によって220人以上が死亡したと伝えられました。米国南部のテネシー州メンフィス国際空港では、9月の月降水量が251mmと平年の約4倍にもなりました。
出典:気象庁「2024 年(令和 6 年)の世界の主な異常気象・気象災害(速報) 」p4(2024/12/25)
日本では震災のあった能登で大雨が
日本でも9月20日から9月22日、東北地方から西日本にかけての広い範囲で雷を伴った大雨となりました。21日には1月に震災被害を受けた石川県能登地方で線状降水帯による猛烈な雨が降り、1時間降水量や3時間降水量などが観測史上1位の値を更新しました。
出典:気象庁「低気圧と前線による大雨 令和6年(2024年)9月20日~9月22日 (速報)」
気温上昇に対する取り組み
環境に大きな影響をおよぼす気温上昇に対して、さまざまな対策が行われています。気温上昇に対する取り組みについて解説します。
国際会議と各国政策
地球温暖化対策の国際的な枠組みとして、世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して、2℃より充分低く抑え、1.5℃に抑える努力を追求することを目的とするパリ協定があります。パリ協定は国際会議であるCOPで採択され、各国がCO2廃出量削減目標を国連の場において提出することなどを定めています。パリ協定参加各国は、CO2排出量を削減する低炭素化政策を進めています。
出典:WWFジャパン「パリ協定とは?脱炭素社会へ向けた世界の取り組み」(2020/6/30)
出典:資源エネルギー庁「「パリ協定」のもとで進む、世界の温室効果ガス削減の取り組み① 各国の進捗は、今どうなっているの?」(2019/5/14)
技術革新
気温上昇を抑えるためには、さまざまな技術革新が必要です。2020年に日本が策定した「革新的環境イノベーション戦略」では、次の5つが重点領域とされています。
非化石エネルギー | 太陽光・風力・水力など再生可能エネルギー |
エネルギーネットワーク | 蓄電池など再エネ導入のための電力系統 |
水素 | 再エネなどの活用により得られるCO2フリー水素 |
カーボンリサイクル | CCUS(CO2の回収・利用・貯留) |
ゼロエミ農林水産業 | 生態系を利用したCO2削減効果 |
このような技術を早期に社会実装することで、温室効果ガス削減が期待されます。
出典:資源エネルギー庁「イノベーションを推進し、CO2を『ビヨンド・ゼロ』へ」(2020/4/17)
身近な気温上昇対策
個人や企業のレベルでも、気温上昇対策を行うことが可能です。
・家庭やオフィスでの節電
・徒歩や自転車、公共交通機関での移動
・オンラインミーティングの活用(長距離移動の抑制)
・廃棄食品の削減
・リデュース、リユース、リペア、リサイクル
・環境に配慮した製品の選択
こうした行動を通じ、誰でも気温上昇の抑制に貢献できます。
まとめ:2024年に世界平均気温が過去最高を記録したことに危機感を持ち、脱炭素社会の実現を
2024年は、世界の平均気温が過去最高となった年でした。気温の上昇は気候変動をもたらし、自然災害や生態系への悪影響という形で、社会や経済に甚大な被害を与えます。パリ協定で目標としている「1.5℃以内」という水準からみても、2024年の上昇水準は極めて危険なものだと言えるでしょう。
2024年に世界平均気温が過去最高を記録したことに、ひとり一人が危機感を持ち、脱炭素社会の実現に向けた行動をしましょう。