世界中の誰もが公平にエネルギーの恩恵を享受できる持続可能な社会を目指し、革新的な蓄電池技術の開発と社会実装に取り組むCONNEXX SYSTEMS株式会社。取締役経営管理本部長の春山氏に、同社のビジョン、技術開発の特徴、そして求める人材像について話を伺いました。

INDEX
既成概念に囚われない蓄電池技術の追求
ー 御社のビジネスの特徴について教えてください。
CONNEXX SYSTEMSは、これまでにない全く新しい蓄電技術を開発し、社会実装することでエネルギーインフラの変革を目指すスタートアップです。例えば、異なる種類の二次電池を一体化・最適化するハイブリッド技術や、鉄と空気を用いた超高エネルギー密度型革新電池など、ユニークな技術開発に取り組んでいます。そして、単なる蓄電池開発にとどまらず、これらを用いた様々な社会の枠組み作りを提案していきたいと考えています。
当社の開発、事業そのものが、環境負荷の低減やエネルギー格差の解消に直結しています。私たちのビジョンは、あらゆる国や地域でエネルギー自立を促し、持続可能でレジリエントな社会を実現することです。
当社は開発型のスタートアップとして、独創的な技術の開発を強みとしています。しかし、私たちのビジョンは、独りよがりになっていては到底実現できないものです。自社の技術や利益のみに拘ることなく、多くの企業やアカデミア、パブリックセクターと協力し、オープンイノベーションを推進することで、より大きく、より理想的な社会基盤の構築に貢献したいと考えています。
技術開発における独自のアプローチ
ー 研究開発に対するアプローチについて詳しく教えていただけますか?
一口に蓄電池に係る開発と言っても、多くの場合は、既存技術の延長線上での連続的な技術の開発、そして「点」あるいは「線」での製品開発であると言えます。
しかし、私たちは、ディスラプティブな技術の創出や、既成概念に囚われないアプローチによって、これまで解決できなかった課題の解決や、既存の技術では進化が止まっていたアプリケーションに新たな可能性を切り拓くことを目指しています。そして、これらの“とんがった”技術は、個別に特定の用途に適用するだけでなく、これらを組み合わせることで、より広範なソリューションの提供できるよう開発を進めています。
例えば、特定のアプリケーション向けに製品を開発し、工場やラインに設備投資して生産し、少し仕様が異なるものを作るたびに同じプロセスを繰り返す――そうした従来のアプローチとは一線を画します。私たちは、当初から技術の組み合わせを前提とした開発を行う「システム志向」のアプローチにより、多様なアプリケーションに機動的かつ柔軟に最適化したソリューションを提供する、「面」での展開を目指しています。
最も重要なのは、技術そのものではなく、技術によって実現する社会です。自社の技術や製品だけにこだわるのではなく、他社の技術や製品、サービスも組み合わせ、システムを最適化することで、最も効果的な形で社会課題の解決に貢献したいと考えています。実現したい未来があり、その未来を実現するために必要な技術がなければ、自ら創り出す。それがCONNEXX SYSTEMSの研究開発のスタンスです。
環境とサステナビリティへの貢献
ー 御社のビジネスは環境やサステナビリティにどのように貢献していますか。
あらゆるシステムの最適化にはバッファが必要です。今後ますます分散化・多様化が進んでいく電力システムも例外ではなく、電力システムにおけるバッファは、まさに蓄電池、蓄電システムにほかなりません。つまり、蓄電システムは、再生可能エネルギーの主力電源化やエネルギーの効率的な活用、BCP等に必須のコンポーネントであり、当社の技術、事業はカーボンニュートラルやレジリエンスによる持続可能な社会の実現に直結してると言えます。
しかし、電力システムを構成する施設や設備は一様でなく、蓄電システムを必要とする理由も様々ですので、画一的な蓄電システムを単にたくさん配置していくことでは電力システムを最適化することはできません。蓄電所のように極めて大きな蓄電容量を必要とする用途もあれば、再生可能エネルギーの平準化やΔkW対応等の大きな入出力性能を必要とする用途もある。そうした用途や施設ごとに最適な性能、仕様を有する蓄電池を適材適所に配置することで、はじめて電力システムを最適化することができるからです。だからこそ、当社は、単なる電池開発ではなく、システム全体を見据えた技術開発を意識しています。異なる種類の二次電池をケミカルな系として一体化する「BIND Battery®」(日米欧特許)技術然り、急速充放電や大電力回生に好適なハイパワーリチウムイオン電池「HYPER Battery™」然り、鉄と空気で従来技術を遥かに超えるエネルギー密度を実現する「SHUTTLE Battery™」然り、です。

EVの普及も電力システムに大きな変化をもたらします。EVは単なる移動手段、単なる負荷ではなく、モビリティ型の蓄電システムとして機能し、V2G(Vehicle to Grid)技術により、グリッドのバッファにもなり得ます。そのEVの普及に必要な充電設備も、交通インフラであると同時に電力インフラでもあります。移動体の電動化は、交通インフラと電力インフラを融合していくものでもあるわけです。こうした背景の中で当社が進めているのが中古EVバッテリーを前述のBIND Battery®技術を用いて蓄電システムにリユースする取り組みです。電池メーカーがEVバッテリーを造り、EV用途としては役目を終えたバッテリーを蓄電システムとしてリユースし、使い切った後にリサイクルして材料レベルで電池メーカーに戻す。このようなEVバッテリーを核としたサーキュラーエコノミーを実現することも、サステナビリティへの大きな貢献です。さらに言えば、こうしたサーキュラーエコノミーの実現は、エネルギー安全保障の観点からも極めて重要です。電極材料としてリチウムやコバルト等のレアメタルを使用するリチウムイオン電池は、そのものが貴重な資源であり、その循環利用は不可欠です。これを国や経済エリア毎にローカライズされたバリューチェーンを構築し、循環利用することには大きな意味があります。
「SHUTTLE Battery™」は、さらにその先を行く革新電池です。リチウムイオンの数倍にもなる高いエネルギー密度もさることながら、最も重要なのは、レアメタルフリーだということです。リチウムやコバルト等のレアメタルは埋蔵エリアが偏在しており、常に政治的な供給リスク、価格変動リスクにさらされています。一方、SHUTTLE Battery™の主要な活物質と言えるものは鉄と空気です。世界中どこでも簡単、安価に入手可能であり、誰もが公正にこの技術の恩恵を享受することができます。これは、単なるエネルギーシステムへの貢献に止まらず、エネルギー格差を解消し、エネルギーを巡る争いを減らすことにもつながります。サステナビリティとは、特定の国や地域だけで考えるものではなく、世界中の人々が地球環境に過度な負荷をかけることなく等しく豊かさを享受する前提でなければなりません。当社がSHUTTLE Battery™の開発と社会実装を最重要テーマに掲げているのはそのためです。
組織体制と成長戦略
ー 御社の組織体制と今後の事業展開について教えてください。
当社の組織は、大きく管理部門、事業部門、研究開発部門に分かれています。事業部門は、現在組織再編を進めているところですが、主に以下の3つのセクターに再編する予定です。一つ目は、既存のリチウムイオン電池を用いた産業用中大型蓄電システムに係る製品企画・開発、ファブレス製造、販売を担う部門。二つ目は、HYPER Battery™のファブレス製造、販売を中心とするバッテリー関連事業を担う部門。三つ目は、中古EVバッテリーリユースに係る開発・実証・事業化準備を担う部門です。

現在、成長戦略の第一段階として、産業用中大型蓄電システムのファブレス製造販売による収益基盤、事業基盤の確立に取り組んでいます。それと並行して、中古EVバッテリーを特許技術でリユースした蓄電システム「EnePOND®」の実証を推進し、2026年を目標に、欧州市場をメインターゲットとしてグローバル展開を開始、本格的なグロースステージへと移行する計画です。これが第二段階となります。このフェーズで黒字化に目途を付け、株式を上場。IPOで調達した資金をSHUTTLE Battery™の実証試験や量産準備に投下し、さらなる飛躍的な成長軌道へとつなげます。これが第三段階であり、当面のシナリオです。
この成長戦略を成功へと導くには、優秀な人材の確保と組織体制の強化が必要不可欠です。
まず重要となるのは、足下の収益事業である産業用中大型蓄電システムの展開を加速させるための営業体制の強化です。ダイレクトフォースによる販売力の強化はもちろん、大口需要家やグリッド向けの蓄電システムの展開においては技術的な知見を有するセールスエンジニアの役割が極めて重要となります。そのため、セールスエンジニアを中心とした営業体制の強化を進めています。
また、EnePOND®のグローバル展開を主軸にした事業展開を見据え、事業開発・企画系の人材についても段階的に増強していきます。IPOも視野に入れ、事業の進捗を踏まえながら、適切なタイミングで管理部門の強化も進める計画です。
もちろん、開発型スタートアップである以上、研究開発部門の強化は継続的に行っています。特に、最重要開発テーマであるSHUTTLE Battery™には、材料、熱、機械設計などの様々な専門知識とスキル、開発経験を有するエンジニアが必要であり、組織としてのスキルセットを拡充していく必要があります。本質的な課題解決能力とクリエイティビティを兼ね備えた人材、一緒に新しい技術の創出に邁進して下さる仲間を常に求めています。
カルチャーと価値観
ー 御社が大切にしているカルチャーや価値観について教えてください。
正直なところ、まだ明確に言語化できていない部分もあり、組織の成長と共に醸成している段階です。冒頭でお話したように、ミッションやゴールは明確ですが、あらゆる意思決定や行動の判断基準となるような根本的な共有価値観、倫理的規範、ポリシーと言ったものを、きちんと整理する作業を進めている最中です。
ただ、自然と根付いている文化として、国籍、性別、年齢を問わず、誰もが働きやすい環境を大切にするという考え方はあります。社内には、日本人だけでなく、中国人やインド人もいますし、毎年、米国の大学からのインターンを受け入れる等、多様なバックグラウンドを持つ人たちが活躍しています。
これは、創業者である社長の塚本が米国で会社を立ち上げ、グローバルな環境でビジネスを展開してきたことにも関係するかもしれません。設立当初より、国籍や出身に対する拘りがなく、結果として自然に多様性のある組織が形成されてきています。
働く魅力と求める人材像
ー 御社で働く魅力や、求める人材像について教えてください。
私自身のモチベーションは、CONNEXX SYSTEMSのビジョン、技術のユニークさ、そしてソーシャルインパクトにあります。非連続な技術による新たな価値の創出、社会基盤の構築というのは、とてもたいへんなことですし、自分たちだけで出来ることでもありませんが、チャレンジしがいのある、社会的意義のある事業です。
新しい技術を開発し、新しい事業を起こしていくわけですから、想定外のことが起こったり、なかなか思うようにいかなかったりすることもたくさんあります。しかし、そうしたチャレンジングな状況にあって、新しい価値を生み出し、社会課題の解決につながるような議論が平場で出来るというのもまたスタートアップの魅力です。例えば、移動中の雑談から新しいアイディアが生まれ、開発や製品化に結び付くこともあります。もちろん、大企業のような安定性はお約束できませんが、様々なことに挑戦できる環境、自らのアイディアを提案し、議論できる環境があり、大きな仕事をリードしていけるチャンスはたくさんあります。
私たちが求めるいるのは、ビジョンを共有し、その実現に情熱とアントレプレナーシップを持って主体的に取り組める方です。職種やポジションにかかわらず、他人事ではなく、自らのこととして、新しい事業を創出し、共に推進しようという志と意気のある方に、是非仲間になってほしい、そう思っています。
事業開発・企画系の人材については、日本語・英語のスキルは必須で、事業開発や事業企画、市場開発の経験、アライアンスやM&A、海外子会社やジョイントベンチャーの設立および立ち上げ等の経験がある方を歓迎します。GX・エネルギー分野の知見や事業経験をお持ちであればベストですが、それによらず、ポテンシャルと意欲がある若い方は大歓迎です。
営業人材については、GX・エネルギー分野における法人営業、マーケティング、市場開発等の経験をお持ちの方を求めています。単なる物売りではなく、システム志向を持って価値提案、ソリューション営業をしていける方、ビジネスを組み立て、他社をも巻き込みながらプロジェクトを推進していける方が理想です。また、人との縁を大事にし、顧客エンゲージメントを向上させる力を持った人を歓迎します。また、電気分野の技術的なバックグラウンド、再エネを含む電力・電源設備やパワエレ機器に係るシステム・インテグレーションの経験を持つセールスエンジニアは特に大歓迎です。
まとめ
CONNEXX SYSTEMS株式会社は、既存の技術の延長線上ではなく、革新的な蓄電技術開発を通じて、あらゆる国やエリアのエネルギー自立を促し、持続可能でレジリエントな社会の実現を目指しています。リチウムイオン電池のリユースシステム「EnePOND®」や、レアメタルに依存しない鉄-空気電池「SHUTTLE Battery™」などの開発を進め、エネルギーインフラの変革に挑戦しています。
創業以来、既成概念に囚われない独創的な技術の開発に取り組み、その実証と社会インフラを変革し得る事業の準備を進めている同社。2026年に向けた中古EVバッテリーのリユースシステムのグローバル展開や、将来的なIPOも視野に入れた成長戦略を描いています。
同社が求めるのは、技術やビジネスの知識だけでなく、会社のビジョンに共感し、アントレプレナーシップを持って主体的に取り組める人材です。塚本壽社長のもと、国籍や性別に関係なく多様な人材が集まり、素早く行動する文化が根付いています。
蓄電池技術を活用したエネルギーインフラの革新に関心がある方、社会課題の解決に情熱を持って取り組みたい方にとって、大きな可能性を秘めた環境と言えるでしょう。
会社概要
- 会社名:CONNEXX SYSTEMS株式会社
- 代表者:代表取締役 塚本 壽(つかもと ひさし)
- 事業内容:次世代蓄発電システムの開発、製造、販売、システム・インテグレーション
- 本社所在地:京都府相楽郡精華町精華台7-5-1 けいはんなオープンイノベーションセンター (KICK)
- インタビュー協力
春山 佳亮(はるやま よしあき) 取締役 経営管理本部長 - 1994年日本大学理工学部航空宇宙工学科卒業後、エネルギー・環境問題専門コンサルティングファーム株式会社アイ・イー・エー・ジャパンを経て、2001年株式会社メディネットに入社、取締役CFOとして経営管理全般を統括。経営戦略策定、ビジネスモデルの確立、規制対応等を推進し、再生細胞医療事業の立ち上げに主導的な役割を果たすと共に、2003年東京証券取引所マザーズに株式上場を果たす。その後CBO(Chief Business Officer)、COO等を歴任し、事業部門及び研究開発部門を統括。2013年株式会社アドバンスト・メディア執行役員医療事業部長を経て、2014年CONNEXX SYSTEMS株式会社取締役CFOに就任、2023年より現職。