2025年注目のCDP最新動向:環境情報開示がもたらすビジネスチャンス
- 2025年01月27日
- CO2算定
CDPの最新動向について、わかりやすく解説します。いまや企業の環境情報を「収集・分析・公開」するCDPは、世界中で注目を集める存在です。気候変動や脱炭素社会への移行が急務となる中、CDPの動きは投資家やバイヤーにとって、重要な意思決定の材料となっています。実際、世界の主要企業の多くがCDPを活用し、温室効果ガス排出削減や環境保護の取り組みを推進中です。
本記事では、CDPの概要や最新ニュースリリース、さらに注目を集める「質問書」の進化について、詳しく解説します。環境配慮が求められる時代、CDPを活用した戦略が次の競争力を生み出す鍵となるでしょう。
目次
- CDPの概要
- CDPの最新ニュース
- CDP質問書の2025年動向とは!
- まとめ:CDPの最新動向に注目し、環境情報の開示や活用を進めよう!
1.CDPの概要
CDPは、企業などの環境課題への取り組みをサポートする団体です。CDPの概要や活動について解説します。
CDPの概要
CDPは2000年に創立された国際的な非営利団体で、企業や自治体の環境情報を開示するシステムを運営しています。現在、世界の時価総額の3分の2に相当する各国企業が、CDPを通じて環境データを開示しています。CDPは元々「カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト」の略称でしたが、水資源や森林など脱炭素以外の分野へ活動領域を拡大したことにともない、2013年に略称であった「CDP」を正式名称としています。
出典:CDPジャパン「CDPについて」
出典:CDPジャパン「世界の大企業は、気候変動のビジネスチャンスを5兆米ドルと推定従来の予測の2倍に」p3(2024/11/14)
出典:CDPジャパン「CDP ジャパン 500 気候変動レポート 2013」p2(2013/11/6)
CDP質問書について
CDPは各企業へ「質問書」への回答を要請します。要請を受けた企業が質問書の各項目へ回答すると、CDPは当該情報を金融機関や購買企業など情報要請機関へ開示します。企業としてはCDPの質問書へ回答することにより、複数の投資家・顧客企業への情報開示が完了します。このように質問書はCDPの活動において重要な役割を担っています。質問書にはあらゆる環境課題が集約され、相互に関連する複数の環境課題を総合的に捉えることができるようになっています。
alt属性:CDPの情報開示システム
質問書における具体的な質問内容としては、「貴組織はバリューチェーンをマッピングしていますか」「貴組織は、依存、影響、リスク、機会に関連して、短期、中期、長期の時間軸をどのように定義していますか」「活動データを収集し、排出量を計算するために使用した基準、プロトコル、または方法論の名称を選択してください」などのようなものがあります。
出典:CDPジャパン「『企業向け』CDP概要と回答の進め方」p5,16(2024/5)
出典:CDPジャパン「CDP コーポレート完全版質問書 日本語仮訳」p19,23,111(2024/4)
CDPの活動の意義
2024年には700を超える投資家が、CDPを通じた環境情報の開示を要請しました。投資家がCDPを通じて得たデータは、ビジネス上の意思決定や取引先との関係強化に活用されます。また回答企業も、CDP質問書への回答作業を通じて、自社の環境課題の再確認が可能です。このように事業活動へ環境情報の視点を持ち込むことで、気温上昇・気候変動・生態系劣化・森林破壊・水資源枯渇などといった環境問題への取り組みが促されます。
出典:CDPジャパン「地球環境の状態と環境課題に取り組む必要性」p2(2024/5)
出典:CDPジャパン「[企業向け]CDP概要と回答の進め方」p5,8(2024/5)
2.CDPの最新ニュース
CDPはホームページなどを通じて、積極的にプレスリリースしています。CDPの最新ニュースをご紹介します。
2024年版質問書における大幅な変更
2024年のCDP質問書では、従来「気候変動」「フォレスト」「水セキュリティ」と3つに分かれていた質問書を一つに集約するという、大幅な変更がありました。これは複数の環境課題を総合的に捉えることや、ガバナンスや戦略といった分野の質問で重複を避けることを目的としています。また、SME(中小企業)版質問書・金融サービスセクター質問書といった、企業規模やセクターに合わせた質問書が追加された点も、2024年の大きな変更点です。
出典:CDPジャパン「CDP2024コーポレート質問書概要」p4,6(2024/4)
再生可能エネルギーの利用状況
CDPは2024年11月に、世界の主要企業における再生可能エネルギーの利用状況についてレポートを発表しました。当該レポートによると、主要企業の半数近くは現時点で再生可能エネルギーを全く利用していません。また将来的な再生可能エネルギー電力100%化を約束している企業は全体の1割程度に止まっています。CDPではこの結果について、「多くの企業は、再生可能エネルギーによる発電を行うことがビジネス上の利益であるにもかかわらず、移行への取り組みが遅すぎる」とコメントしています。
出典:CDPジャパン「約半数の企業が再生可能エネルギーを未使用 世界のクリーンエネルギー目標達成への遅れを CDP が明らかに」p1-2(2024/11/28)
COP29への対応
2024年11月にCDPは、「COP29において、各国政府がより多くの投資可能な気候計画を発表することで、環境における成長を加速することできる」と発表しました。CDPによれば、企業はこれまで以上に気候変動への取り組みによるビジネスチャンスに注目しており、世界の大企業は潜在的な利益が従来予測の2倍規模である5兆米ドル近くに上ると推定しています。この分析はCDPが企業から収集したデータに基づいており、COP29の政府会合に合わせて発表されています。
出典:CDPジャパン「世界の大企業は、気候変動のビジネスチャンスを5兆米ドルと推定 従来の予測の2倍に」p1-3(2024/11/11)
ブランドの刷新
CDPは2025年に創立25周年を迎え、ブランド・アイデンティティ(企業や団体のイメージや価値観を表す概念)を刷新しました。これに伴い2025年1月14日以降、ホームページの体裁なども大きく変わっています。新たなブランド・アイデンティティでは「透明性からアクションへ」で、気候と自然への有意義なアクションを促進するために、改めて透明性に焦点が当てられています。また環境を保護・回復し、地球への悪影響を低減するような方法でアクションを起こすという意味の「アースポジティブ」という概念が、アクションの在り方として掲げられています。
出典:CDPジャパン「透明性からアクションへ:CDP がアースポジティブな未来に向けてブランドを刷新」(2025/1/14)
3.CDP質問書の2025年動向とは!
環境情報を開示する企業は、CDPの質問書が今後どうなるかについて関心が高いでしょう。CDP質問書の、2025年の動向について取り上げます。
回答スケジュールの変更
CDPは、年1回の情報開示サイクルで活動しています。2025年1月14日にCDPは、2025年のCDP質問書回答スケジュールの予定を発表しました。
3月31日の週 |
回答要請機関のポータルオープン |
5月19日の週 |
回答開始 |
9月15日の週 |
スコアリング対象となる回答提出期限 |
2024年は回答開始が6月4日、回答提出期限が10月2日でしたので、いずれも半月程度早くなっている点に注意が必要です。
出典:CDPジャパン「よくあるご質問」p3(2023/5/31)
出典:CDPジャパン「2025開示サイクル」
出典:CDPジャパン「CDP2024コーポレート質問書回答提出プロセス」p3(2024/9/2)
各種開示基準への適合
環境情報の開示については、さまざまな基準が存在します。CDP質問書はそれらの基準の多くに適合したものとなっており、今後も適合対象の拡大が期待されます。
開示基準等 |
対応状況 |
整合済み |
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広範な共通性と相互運用性 |
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部分的に整合済み |
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整合状況を確認中 |
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整合済み |
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協働し、情報開示作業の重複を回避 |
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サステナブルファイナンス・タクソノミーのベストプラクティス基準をCDPの情報開示システムに統合するべく取り組み中 |
CDPではこのように質問書の内容を世界の主要な基準と整合させ、ひとつに集約することで、真の相互運用性の実現を目指しています。
4.まとめ:CDPの最新動向に注目し、環境情報の開示や活用を進めよう!
CDPは2025年に創立25周年を迎え、ブランド刷新を含む新たな動きを見せています。世界中の企業が活用するCDPの環境情報開示システムは、気候変動への関心が高まる中、さらに注目を集めています。また、質問書の内容も進化を続けており、企業には柔軟な対応力と、環境課題に真摯に取り組む姿勢が求められるでしょう。
このような背景の中、企業が環境目標を達成するためには、温室効果ガス排出量の可視化や効果的な取り組みの計画が不可欠です。
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