環境問題

温室効果ガスの第三者保証とは? 保証を受ける目的やポイントについて

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温室効果ガスの第三者保証とは? 保証を受ける目的やポイントについて

企業が開示する温室効果ガス(Greenhouse Gas、以下「GHG」)排出量の情報は、公正かつ正確な内容でなければなりません。企業はGHG削減に向けた取り組みを可視化するために、ウェブサイトや報告書などで開示を行うことが多いです。

しかし、自主的な算定だけでは正確性が十分でない場合もあるため、第三者機関による保証を実施し、開示情報に信頼性を持たせることが重要です。本記事では、GHGの第三者保証を受ける目的や保証を受ける際に押さえるべきポイントについて詳しく解説します。

INDEX

第三者検証とは?

まず、第三者保証という言葉の意味とその必要性について解説します。

(1)意味

企業が開示する情報や報告書(環境への取り組み、データの正確性など)は、投資家やお客様、地域の方々など、活動に関わるすべての方々(ステークホルダー)に正しく理解していただくために、信頼性が非常に大切です。この信頼性を高める仕組みの一つが、「第三者保証」です。

第三者保証は、企業と利害関係のない独立した外部の専門家(第三者)が、企業が作った情報や報告書の内容に誤りが無いかを客観的にチェックし、その結果を保証するプロセスを指します。

そのなかでも特にGHGの第三者保証は、国際基準や業界規範に従っていることを示す     ことも重要であり、信頼性の高い情報開示が求められる現代において、その意義はますます増しています。

(2)必要性

企業が開示した情報を外部の専門家がチェックすることで、情報に「客観的なお墨付き」が与えられ、開示された情報の信頼性を高めることができます。またそれにより、ステークホルダーは安心して情報を利用できるようになります。

 第三者保証は、企業が社会に向けて発信する情報の正確性を確保し、信頼という目に見えない価値を得るために非常に重要な役割を果たしています。

 また現在は日経225の66%以上が第三者保証を取得しており、この数は今後更に増加することが見込まれています。

出典:KPMG  日本おけるサステナビリティ報告2020

出典:KPMG  日本の企業報告に関する調査2023

GHGの第三者保証では、正確な算定方法の選定、モニタリングにおける5つの原則の遵守、そして保証水準を確保することが重要です。ここでは、これら3つのポイントについて詳しく解説します。

(1)算定方法

GHG排出量を算定する際は、以下の3点を定めたうえで計算することが必要です。

1. 期間

GHG排出量を算定する際には、対象となる期間を定め、その期間内の排出量を計算することが重要です。たとえば、一年間や四半期など、特定の時間枠を設定することで、報告する排出量の範囲を明確にし、一貫性のあるデータを提供します。

2. 範囲

範囲とは、GHG排出量を算定する際に、どの対象を含めるかを示すものです。企業全体を対象とするのか、特定の工場や施設単位で算定するのかを決定することで、算定の対象範囲を明確にします。これにより、どの部分からの排出量を報告するかが定まるため、データの正確性と比較可能性が向上します。

3. 方法

GHG排出量を計算する際の手法や基準を明確化することも重要です。具体的には、排出量を測定するための計測手法や排出係数を指します。基本的には、燃料使用量や生産量などのデータと排出係数の積でGHG排出量を算出します。正しい算出方法は、正確で一貫性のあるデータの開示につながり、ステークホルダーや第三者機関に対して高い信頼性を示すことができます。

出典:環境省:「温室効果ガス排出量の算定と検証について (ISO14064, 14065関連)

(2)モニタリングにおける6つの原則

GHG排出量の情報を提供するにあたり、企業は以下の5つの原則に従い、GHG排出量の削減モニタリングおよび、算定と報告をすることが求められています。

  • 目的適合性(Relevance)

目的適合性とは、GHG排出源や吸収源を利用者のニーズに合わせて正確に選定し、適切な組織境界や算定方法、排出係数を設定することを指します。たとえば、企業間での比較を行う場合、組織境界の設定が異なると結果が不正確になる可能性があります。これを防ぐためには、算定の目的、組織境界の考え方、排出量の定量化方法を明確に規定することが重要です。

  • 完全性(Completeness)

完全性とは、指定した範囲や期間におけるGHG排出量と吸収量を正確に算定することです。そのためには、対象活動の設定や排出源の特定方法を明確に示す必要があります。排出量の多い施設や設備のみを算定した場合、全体の排出量を正確に反映することができません。対象となる全排出源のGHG排出量を漏れなく算定することが求められます。

  • 一貫性(Consistency)

一貫性とは、GHG排出量および吸収量を正確に比較するため、対象範囲や期間に対して同じ算定方法やデータを使用することです。年度ごとに異なる算定方法を用いた場合、結果の信頼性が低下する恐れがあります。そのため、排出係数や算定ルールの統一、情報管理や算定手順の策定・文書化が重要です。

  • 透明性(Transparency)

透明性とは、第三者機関およびステークホルダーが正しい判断・決定を下せるよう、公正かつ適切な情報を開示することです。GHG排出量を報告する際には、そのデータや算定方法をしっかりと明記し、透明性を確保しなければなりません。そのため、報告書への記載項目および開示範囲の規定が求められます。

  • 正確性(Accuracy)

正確性とは、正確なデータを収集し、信頼性の高い情報を開示することを指します。算定や計測における誤差を可能な限り減らし、精度の高い数値を提供することが重要です。そのため、計測機器の精度管理やモニタリング方法の規定を徹底し、正確な計測を行うことが求められます。

出典:環境省:「温室効果ガス排出量の算定と検証について (ISO14064, 14065関連)  平成23年3月 環境省 地球環境局 地球温暖化対策課 市場メカニズム室 p23

(3)検証の保証水準

現在、温室効果ガスの第三者保証はISO基準とISAE基準の2種類があります。ISOには様々な規格があり、必要な目的に応じてさまざまな規格を使用します。ISO14064-1は組織レベル、ISO14064-2はプロジェクトレベル、ISO14067は製品レベルに焦点を当てています。

また一方で、ISAE基準の保証においては、ISAE3000(過去財務情報の監査又はレビュー以外の保証業務)とISAE3410(GHG情報に対する保証業務)などの国際保証業務基準が使われています。また、サステナビリティ情報の保証業務基準であるISSA5000(サステナビリティ情報の保証業務に関する実務指針)も策定され、今後はこの基準が用いられる予定となっています。

出典:環境省「温室効果ガス排出量の算定と検証について (ISO14064, 14065関連)」p46

第三者検証を受けるメリット

GHG排出量に関する情報を保証付きで開示することにより、企業にはさまざまなメリットがもたらされます。

1. 情報の信頼性向上

2. ブランドイメージ

3. コスト削減とネットゼロ

4. リスク低減とプロセス改善

5. 複数の報告枠組み

次でそれぞれのメリットを詳しく解説します。

(1)情報の信頼性向上

第三者機関による保証を受けることで開示情報の信頼性が増し、企業の取り組みを正しく伝えることが可能です。また、企業はステークホルダーから高い信頼を得ることで、持続可能な経営を実現できます。

(2)ブランドイメージ

GHG第三者保証は、単なる形式ではありません。企業の社会的信頼を高めることは、ブランドイメージの向上に繋がります。これは、従業員のエンゲージメントの向上や新規顧客・新たな市場の獲得に不可欠な要素です。

(3)コスト削減とネットゼロ

GHG排出量の第三者保証を受けることで、排出量の正確な把握が可能になり、無駄なコスト削減に繋がります。また、ネットゼロ目標達成に向けた進捗を明確に把握できるため、信頼性のある戦略と情報の提供をすることが可能です。

(4)リスク低減とプロセス改善

第三者保証では、保証水準に基づいた厳格な精査が行われるため、情報がステークホルダーに開示される前に報告ミスを減らすことが可能です。また、専門家による評価を受ける中で、環境リスクの早期発見と適切な対応を講じることができます。さらに、保証プロセスの改善点も指摘されることで、持続的なプロセスの向上が実現します。

(5)複数の報告枠組み

GHGの第三者保証を受けて開示した情報は、複数の報告枠組みで活用可能です。CDPやSSBJなど、国内外の気候変動対策プログラムやフレームワークが増え、企業には多くの報告義務がありますが、保証済みデータの再利用でコストやリスクが軽減されます。

出典:CDP「環境データの 第三者検証による ビジネス上のメリット CDPガイド  p4 p5

まとめ:第三者保証を受けることが企業価値の向上に繋がる

第三者保証を受けることは、企業価値の向上に大きく貢献します。独立した第三者による     保証は、情報の信頼性を高め、ステークホルダーからの信頼を獲得するための重要なステップです。

第三者保証を受けることにより、環境データの正確さが保証され、リスク管理やプロセス改善にもつながります。さらに、複数の報告枠組みへの対応が容易になり、マーケティングや競争優位性の強化にも役立ちます。結果として、企業の評判が向上し、持続可能な成長を実現するための信頼できる基盤の構築に有用です。

GHG排出量の情報開示が必要な企業様は、本記事を参考に第三者保証の導入を検討してください。アスエネヴェリタスは、今までに物流・製造・小売など、多くの業界に対してGHGの第三者保証を実施してきた実績がございます。保証についてご興味がございましたら、下部のバナーからお気軽にお問合せください。

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