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ブルーアンモニアとは?CCSの取り組みとブルーアンモニア効果について解説

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ブルーアンモニアとは?CCSの取り組みとブルーアンモニア効果について解説

ブルーアンモニアは、CO2を大気中に排出しないという特徴から、脱炭素社会実現に向けた有効活用が期待されています。ブルーアンモニアの製造に大きく関係しているのがCCS技術であり、CCSはカーボンニュートラル達成に不可欠な取り組みのひとつとして位置付けされています。

ここでは、ブルーアンモニアの基礎知識を始め、CCS技術との関係性、今後の期待がかかるブルーアンモニアの有効活用とその効果についてご紹介します。

INDEX

脱炭素に向けたCCSの取り組み

現在、世界では脱炭素社会に向けた取り組みが進められています。日本でも「2050年カーボンニュートラル宣言」のもと、脱炭素社会の構築が重要視されています。そこで期待がかけられている技術がCCSです。CCSは、CO2排出量削減に大きな効果があることから、日本でも脱炭素の取り組みとして導入を目指しています。

CCSとは何か?

CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)とは、「CO2回収・貯留」のことで、化学工場や発電所などから大気中に排出された化石燃料由来のCO2を、回収設備を使ってほかの気体から分離・回収し、回収したCO2を地中や海底などに埋め立てる技術のことです。そのため、CCSにはCO2排出量削減に大きな効果があり、「2050年カーボンニュートラル宣言」に不可欠なものと考えられています。

日本は、「CO2分離・回収」「輸送」「貯留」のCCSのサプライチェーンをトータルで担える高い技術があり、現在、北海道の苫小牧地域を始めとする7ヶ所の設備(うち2ヶ所は海外輸出)でCCSの運用開始を目指しています。

CCSの流れ出典:資源エネルギー庁『知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~CO2を集めて埋めて役立てる『CCUS』』(2017/11/14)

出典:資源エネルギー庁『エネルギーを起点とした産業の GX(グリーントランスフォーメーション)について』(2022/03/01)

出典:環境展望台『CO2回収・貯留(CCS) – 環境技術解説』(2016/09/12)

出典:資源エネルギー庁『CCSに関する検討状況について』p,8.p,14.(2023/06/22 )

CCSが必要とされる背景

日本は、2050年のカーボンニュートラルに向け、目先の目標として「2030年度のCO2排出量を2013年度に比べて46%削減」を掲げています。2021年度のCO2排出量・吸収量を見ると11億2200万トン(CO2換算)で、2013年度と比べると20.3%減少しています。

しかし、CO2排出量自体は11億7000万トン(CO2換算)で、前年よりも2.0%増加している状況です。2030年度のCO2排出量を7億6000万トン(CO2換算)とすることを目標としていることから、CCSの技術に大きな期待がかかります。

2021年度の温室効果ガスの排出・吸収量

出典:環境省『2021年度温室効果ガス排出・吸収量(確報値) 概要』p,2.(2023/04/21)

出典:環境省『CCUSを活用した カーボンニュートラル社会の 実現に向けた取り組み』p,2.(2020/02/12)

出典:環境省『2021年度(令和3年度)の温室効果ガス排出・吸収量(確報値)について | 報道発表資料 | 』(2023/04/21)

出典:資源エネルギー庁『CCSに関する検討状況について』p,11.(2023/06/22)

ブルーアンモニアとは何か

燃やしてもCO2を排出しないアンモニアは、ゼロエミッション燃料として導入が注目されており、いくつか種類があるアンモニアの中でも、ブルーアンモニアは特に石炭火力代替燃料として期待が高まっています。ここでは、ブルーアンモニアについてご紹介します。

ブルーアンモニアとは

ブルーアンモニアとは、化石燃料由来のアンモニアを製造する際に発生したCO2をCCSなどで回収・貯留し、大気中にCO2を排出させない方法で製造されたアンモニアのことです。

アンモニア自体は燃焼時にCO2を排出しないことが特徴ですが、天然ガスなどの化石燃料を原料とするアンモニアを製造する過程では、大量のCO2を排出するため、地球温暖化の大きな要因にもなっています。

一方、ブルーアンモニアは製造工程のCO2を大気中に排出させないため、石炭火力発電の代替燃料としてカーボンニュートラルに有効な手立てと期待されています。

出典:経済産業省『石油・天然ガス小委員会報告書(案)』p,6.p,7.(2021/4/16)

出典:資源エネルギー庁『第3節 一次エネルギーの動向』(2021/07/19)

出典:資源エネルギー庁『第4節 燃料アンモニアの導入拡大に向けた取組』(2021/07/19)

ブルーアンモニアの有効活用「燃料アンモニア」とは

アンモニアは燃焼してもCO2を排出しないため、燃料としての利用に大きな可能性が期待されています。燃料アンモニアの利用として「アンモニア火力発電」「火力発電への混焼」「船舶用燃料」などが挙げられますが、具体的な目標としては2030年までに石炭火力に20%の燃料アンモニアを混焼導入および導入の拡大を目指しています。

ブルーアンモニア利用の燃料アンモニアは、2050年のカーボンニュートラルに向けた脱炭素実現に重要なアクションです。そのため、今後の燃料アンモニア導入の拡大、製造・運用コストの低減などの課題をクリアにしていく必要があります。

出典:資源エネルギー庁『第2節 燃料アンモニアの導入拡大に向けた取組』(2023/07/26)

出典:経済産業省『燃料アンモニアサプライチェーンの構築(国費負担額:上限688億円)』(2023/12/28)

グレーアンモニア・グリーンアンモニアとの違い

アンモニアにはブルーアンモニアの他に、「グレーアンモニア」「グリーンアンモニア」と呼ばれるものがあります。グレーアンモニアとは、石炭や天然ガスを原料としたアンモニアで、ブルーアンモニアとの違いは、グレーアンモニアは製造時のCO2が大気中に排出されてしまう点です。

グリーンアンモニアとは、再生可能エネルギーから製造されるアンモニアで、最大の利点として原料にCO2を排出しない再生可能エネルギーが使用されているので、製造の段階からCO2排出を防ぐことができます。カーボンニュートラル実現にはグリーンアンモニア導入が不可欠ですが、その移行段階としてブルーアンモニアが位置づけられています。

出典:経済産業省『石油・天然ガス小委員会報告書(案)』p,6.p,7.(2021/4/16)

出典:資源エネルギー庁『第4節 燃料アンモニアの導入拡大に向けた取組』(2021/07/19)

ブルーアンモニア導入が期待される取り組み

脱炭素に向けて、製造時にCO2を排出しないブルーアンモニアの導入が少しずつ進められています。ここでは、ブルーアンモニアの導入が期待される取り組みをご紹介します。

発電分野におけるアンモニアの利用

ブルーアンモニアは、石炭火力発電の代替燃料としての利用が期待されています。その理由として、アンモニアと石炭は混ぜて燃焼することが簡単に行えるという特徴と、現在運用されている石炭火力発電の設備が利用でき、初期コストを抑えられる点が挙げられます。

現段階では、石炭火力バーナーに20%のアンモニアを混焼させることに成功しており、最終的には火力発電設備でアンモニア燃料を直接燃焼することを目指しています。

出典:国土交通省『水素・アンモニアを取り巻く現状と 今後の検討の方向性 資料3』p,22.(2022/4/18)

出典:資源エネルギー庁『第2節 燃料アンモニアの導入拡大に向けた取組』(2023/07/26)

燃料アンモニアサプライチェーンの構築

ブルーアンモニアを燃料アンモニアとして脱炭素に導入するには、燃料アンモニアを供給する側と利用する側が一体となった、大規模なサプライチェーンの構築が重要となります。

供給する側となる製造面においては、火力発電への混焼や船舶用燃料、工業炉などへの導入に向けた燃料アンモニア製造の大規模化や、火力発電設備利用などでのコスト削減、CO2排出量削減技術の開発・実証などが挙げられます。また、利用する側ではボイラーやタービン設備での燃料アンモニアの高燃焼・専燃化バーナーの開発が必要となります。

燃料アンモニアの安定したサプライチェーンを構築するために基金事業を導入しながら、年間の国内需要3000万トンおよびCO2排出削減量6000万トンを目指しています。

出典:国土交通省『水素・アンモニアを取り巻く現状と 今後の検討の方向性 資料3』p,17.p,23.(2022/4/18)

ブルーアンモニア導入を目指す企業の取り組み事例

最後にブルーアンモニアの未来を担う企業の取り組み事例をご紹介します。

三井物産株式会社

大手総合商社の「三井物産株式会社」では、アメリカとオーストラリアで独自の事業を展開しています。アメリカでは、アンモニア製造最大手「CF Industries Holdings, Inc.」とパートナーシップを結び、ブルーアンモニアの共同開発事業を進めています。また、オーストラリアでは天然ガス開発からアンモニア製造、CCSまでを、自社で一貫して行う事業が進められています。ブルーアンモニア導入だけでなくグリーンアンモニア導入も含めて、しっかりとした独自のサプライチェーン構築を実践しています。

出典:経済産業省『クリーン水素アンモニアサプライチェーン構築への取組』p,8.p,9.(2022/11/15)

出光興産株式会社

石油元売会社の「出光興産株式会社」では、2022年から国内外の企業などと連携して、原料調達から発電・自社での利用まで、それぞれの分野で自社のアンモニアロードマップに基づいた取り組みを進めています。

製造技術開発や輸送、貯蔵においては、ベンチャー企業への出資やコンビナートの支援事業など、アンモニア導入拡大を視野に入れた取り組みを積極的に行っています。ひとつの企業だけでなく、同じ目標を持ったいくつもの企業が協力をしてアンモニア導入を目指しています。

出典:経済産業省『アンモニアサプライチェーン構築に向けた当社の取組みについて』p,4.(2022/10/05)

まとめ:ブルーアンモニアの知識を深め導入の実現を目指そう!

CO2を排出しないアンモニアは、脱炭素社会実現に向けて不可欠な要素です。現在、導入が進められているブルーアンモニアは、製造時に排出されるCO2をCCS技術などで回収・貯留したものを指し、大気中にCO2を排出しないため、石炭火力発電の代替燃料としての有効活用が期待されます。

今後、安定した燃料アンモニアを製造・利用するためには、双方が一体となったサプライチェーンを構築することが重要となります。脱炭素社会を実現させるためにブルーアンモニアの知識を深めて、導入拡大に貢献しましょう。

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