TCFDにどのように賛同する? 開示項目や事例を紹介
- 2022年10月20日
- CO2算定
企業間において脱炭素の考えが浸透する中、持続可能な企業であるためにはTCFD提言が求める項目を開示するなどの取り組みが求められます。TCFD提言に基づく気候変動に関する情報開示に関心がある法人の皆さまが知っておくべき、TCFDに関する基本的な知識や開示項目、企業はどのような情報を開示しているのかなどについてご紹介します。
目次
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TCFDに関する基礎知識
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TCFDの開示項目について
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TCFD開示項目事例
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まとめ:TCFD開示項目など知識を深め、賛同できるようにしよう!
1. TCFDに関する基礎知識
そもそもTCFDとは、どのようなものなのでしょうか?TCFDはどのようなものなのかや、TCFDへ賛同することの重要性、情報開示するメリットなどについてご紹介します。
そもそもTCFDとは?
TCFDとはTask Force on Climate-related Financial Disclosuresの略で、気候関連財務情報開示タスクフォースと呼ばれています。G20からの要請を受け、2015年に金融安定理事会が主体となりTCFDが設置されました。
TCFDの主な目的は、投資家などが気候変動関連リスクを理解する上で役立てることができる一貫性のある開示の枠組みを策定することです。TCFDから送付された気候変動関連リスクに関する質問は、必ず回答しなければならないものではなく任意になります。
出典:金融庁『金融安定理事会による「気候関連財務情報開示タスクフォースによる最終報告書」の公表について』(2017/7/11)
加速するTCFDへの賛同
TCFDからの質問に回答するかは任意ですが、日本で脱炭素経営が広がりを見せており、持続可能な企業になるためには賛同することが大切です。日本におけるTCFDの賛同状況やSBT認定企業、RE100参加企業は、世界でもトップクラスです。その中でも各国と比較して特に多いのがTCFDへの賛同数です。2021年7月5日時点において、日本は世界第一位です。
情報を開示するメリット
TCFDへの賛同などを通して、企業は様々なメリットを得ることができます。たとえば社会的イメージの向上や新しいビジネスチャンス獲得の機会がメリットとして挙げられます。投資家などに脱炭素経営を見える化することで、企業価値を高めることができます。
近年における企業の脱炭素への関心の高まりから、サプライヤーにCO2排出量削減の目標や削減を求める大企業が増えています。そのため脱炭素経営を行っていることを公開することで、新しいビジネスチャンスを獲得する可能性が生まれます。
2. TCFDの開示項目について
TCFDは、4つの項目を開示することを推奨しています。ここではTCFDの開示項目について整理しましょう。
ガバナンス
気候関連リスクや機会について組織がどのような体制で検討し、企業経営に反映しているかの情報を公開します。TCFD提言では、投資家などの関心事項であるとし、以下の情報を公開することを推奨しています。
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気候関連リスクや機会についての取締役会による監視体制の説明
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気候関連リスクや機会を評価・管理する上での経営者の役割の説明
戦略
気候関連リスクや機会が、短期・中期・長期にわたり企業にどのような影響をもたらすかの情報を公開します。2℃シナリオなどに照らした分析を含みます。TCFD提言では、以下の3つの項目に関する情報を公開することを推奨しています。
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組織が識別した短期・中期・長期の気候関連のリスクや機会の説明
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気候関連のリスクや機会が組織のビジネスや戦略、財務計画に及ぼす影響の説明
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様々なシナリオに基づく検討を踏まえた組織の戦略のレジリエンスの説明
リスク管理
気候関連リスクに対する識別や評価、管理方法についての情報を公開します。TCFD提言では、以下の3つの項目に関する情報の開示を推奨しています。
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組織が気候関連リスクを識別・評価するプロセスの説明
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組織が気候関連リスクを管理するプロセスの説明
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組織が気候関連リスクを識別・評価・管理するプロセスが組織の総合的リスク管理にどのように統合されているかについての説明
指標と目標
気候関連リスクや機会を評価する時に、どのような指標を用いて、目標の進捗度を評価しているのかについての情報を公開します。TCFD提言では、指標と目標について組織に以下のように推奨しています。
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自らの戦略とリスク管理プロセスに即し、気候関連のリスクや機会を評価する際にもちいる指標の開示
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スコープ3の温室効果ガス排出量と関連リスクについての開示
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気候関連リスクや機会を管理するために用いる目標、及び目標に対する実績についての説明
出典:資源エネルギー庁『企業の環境活動を金融を通じてうながす新たな取り組み「TCFD」とは?』(2019/9/3)
出典:TCFDコンソーシアム『気候関連財務情報開示 に関するガイダンス 2.0』(2022年3月改訂)(p.28〜56)
3. TCFD開示項目事例
企業は実際どのようにTCFDが推奨する項目を開示しているのでしょうか。ここではTCFDに賛同している企業の事例についてみていきましょう。
ヤマトホールディングス
ヤマトグループは中長期の温室効果ガス排出削減目標を設定し、取締役会をトップとし、環境委員会をグループ各社にも設置し、気候変動を含む環境課題の審議や決定、監督を行っています。以下のような短期・中期・長期の気候関連のリスクと機会、それに対する管理と戦略についての情報を公開しています。
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費用面におけるリスク
温室効果ガスの排出規制や削減義務が強まる中、低炭素車両の購入費や設備の改修費が増加し、その結果運送費や管理費に影響が出る可能性がある
(管理と戦略)
省エネルギー施策を講じた上で温室効果ガス排出量の削減を進める。低炭素車両へのシフトを進めながら、市街地の集配では電動アシスト自転車や台車などの使用を増やす。
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豪雨や台風が及ぼす収益への影響
気候変動により豪雨や台風が深刻化することでサービス停止のリスクがある。その結果収益に影響が出る可能性がある。
(管理と戦略)
災害対応マニュアルをもとに訓練や対応を実施する。災害により集配を停止する場合は、ホームページで情報を公開することで、影響を最小限に抑える。
出典:ヤマトホールディングス『気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への対応』
4. まとめ:TCFD開示項目など知識を深め、賛同できるようにしよう!
この記事では、TCFDに関する基本的な知識やTCFDが求める開示項目などについてご紹介しました。企業の気候変動に関する情報の開示事例などを参考に、脱炭素経営について検討しましょう。