2025年度の「ASUENE ESG Award」において、創業60年以上の歴史をもつ老舗段ボール製造業である、株式会社クラウン・パッケージがプラチナメダルを受賞しました。同社のサステナビリティ推進課 早乙女氏、八木原氏、奥野氏に、事業の特徴やESG経営に取り組む意義、今後の展望についてお話を伺いました。
ASUENE ESGとは「ASUENE ESG(現『ASUENE SUPPLY CHAIN』)」は、企業のサプライチェーンのESG(E:環境、S:社会、G:ガバナンス)経営の取り組みを可視化できるESG評価クラウドサービスです。GRIやTCFDなど国際的なESGフレームワークに準拠したアンケートを活用し、サプライヤーのESGリスクを評価・可視化するとともに、改善に向けた支援を行います。人権デュー・デリジェンス(人権DD)や、FTSE、MSCIなど国内外の規制やイニシアチブに対応した高度なコンサルティングも提供しています。 ASUENE ESG Awardとは「ASUENE ESG」の評価基準に基づいて算出されたESGスコアや総合評価をもとに、ESGへの取り組みレベルの高さ、改善への意欲、可視化への積極性を示す企業を表彰するもので、今年で第2回の開催となります。優れたESGの取り組みを実践している企業に対し、評価の上位から順にプラチナ・ゴールド・シルバー・ブロンズの各メダルを付与しています。 |
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木材資源に代わる新たな素材として、廃棄物を有効活用した「ピュアパーム®モールド」を開発

当社は、1962年に創業し、段ボール製パッケージや容器、店頭ディスプレイやPOPなどを製造、販売しています。全国に拠点をもち、大手外食チェーンや食品メーカーから地場に根付いた小売店まで豊富な取引実績が強みです。お客さまの商品や用途に合わせて、オーダーメイドでパッケージを製造、納品しています。中でも超極薄の段ボール「マイクロフルート」が、当社の主力製品です。
「マイクロフルート」は、段ボールとしての強度を保ちつつ、パッケージの軽量化を実現できる、美粧性の高い素材です。当社独自の形状を組み合わせることで、商品訴求だけでなく、脱プラ・減プラも可能になり、環境負荷の低減に貢献します。そのほか、耐油、耐水といったさまざまな機能を付加した紙や、ブルーベリーの皮、紅花の花びらなどの一度役目を果たした素材を紙の原料としてアップサイクルした「スマートパピエ」など、素材開発にも積極的に取り組んでいます。
ここ数年は脱プラスチックの潮流の中で、代替となるパルプモールドの研究開発にも注力しています。2023年に、マレーシアで合弁会社を設立し、ヤシカサパルプを主原料としたサステナブルな「ピュアパーム®モールド」を完成させました。パーム油を搾った後に残るパームヤシカサ(EFB)は、多くが廃棄されてしまいますが、これを有効活用し、モールド容器を製造しています。
当社は、ESGの見える化と改善活動を通して企業価値を上げていくために、2023年度から「ASUENE ESG」を導入して、ESG評価に取り組んでいます。取り組みを始めた当初よりSAQ(自己評価質問票)や問い合わせが増えてきており、最近では、1週間に約1件のペースでサステナビリティ関連の問い合わせに対応しています。
「ASUENE ESG」を導入しているおかげで、スムーズに回答することができていますが、最近問い合わせの内容に変化を感じます。これまでは、方針の策定の有無に留まっていたものが、運用や具体的なアクション、社内教育についてなど、一歩踏み込んだ内容となり、特に人権やBCP(事業継続計画)についての要請が高まってきているようです。時代の流れに取り残されないように活動を随時見直していきたいと思います。
各拠点の電力の約10%を再生可能エネルギーに切り替えて、環境の取り組みを推進

当社は、2021年に創業60周年のタイミングで「CSRビジョン2030」を掲げ、ESGに配慮した事業活動を推進してきました。中でも環境における重点課題を「CO2排出量の削減」と「資源循環」と定めて、「2030年までにCO2排出量を2018年度比で30%削減する」という目標達成のため、全社をあげて事業を展開しています。2025年のアワードでは、昨年からランクアップして「プラチナメダル」を受賞することができました。
昨年の評価結果を受けて、2024年度は「環境」項目の取り組み推進として、各拠点の使用電力の約10%を再生可能エネルギーへと切り替えました。2025年度は30%を目標に、来年度以降も段階的に割合を増やしていく予定です。今回のアワード受賞は、主に「E」に関わる環境設備を整備したことが評価されたと感じています。当社の製造部を中心として、生産効率の改善や設備更新などに注力してきたので、その努力が客観的に評価されてとても嬉しく思います。
また、従業員のサステナビリティへの参加意識を高めるために、社内グループウェア上に「みんなのサステナ活動記録」というデータベースを導入し、各拠点からの投稿や情報共有を促して、サステナ活動(地域活動への積極的な参加や職場環境の改善など)を草の根的に広める活動も行っています。社内広報を強化することで取り組みをバージョンアップしていきたいです。
ハラスメント対策や女性活躍推進も、今後強化が必要なトピックスです。ESG評価に取り組んだことで、以前よりは進めやすくなりましたが、全社レベルでの浸透となるとまだまだこれからです。「東京女性未来フォーラム2025」への署名をきっかけに、女性の管理職比率向上に取り組んでいきます。
「ASUENE ESG」は、回答するだけのSAQとは異なり、具体的な改善点などのフィードバックをいただけるのがありがたいです。「ASUENE ESG」で評価されることで、今の社会要請やトレンドが見えてくるため、世の中の潮流と足並みを揃えることができます。それだけではなく、豊富な他社事例も交えながら、自分たちのESGの取り組みの立ち位置を知ることができています。 情報のアップデートが激しいESG業界の中で、効率的に欲しい情報が得られる参考書として「ASUENE ESG」を活用しています。
全社一丸となってESGを加速させることで、企業価値向上に繋げていきたい

国内市場では、コロナ禍以降の資材の高騰を受けて「コスト」重視の声も増えていますが、当社の製品開発の理念としては創業当初より「環境配慮」を一貫しています。サステナビリティやESGの側面からお客様に付加価値を実感してもらい、拡販に繋げていきたいと考えています。当社の環境配慮製品の良さを適切にお客さまへ伝えるために、ESG評価やアワード受賞のニュースをうまく活用していきます。
社会とガバナンスについては、昨年から「社内教育・浸透」が改善ポイントに挙げられていました。引き続き、全社一丸となってESGやサステナビリティを「自分ごと」として取り組める環境作りが課題です。社外からの問い合わせ内容と当社の対応を、都度全社に共有しているため、ESGの取り組みの必要性が従業員にもじわじわと伝わってきています。当社は、毎年10月にサステナビリティ報告書を発行しています。今年は「人」にフォーカスして、従業員に身近な内容にしました。アワード受賞をきっかけとして社内の機運を高め、より積極的な社内教育に取り組む予定です。
ESGの取り組みを強化すると言うと、関係部署以外の従業員からは「なぜ?」「利益が出るの?むしろお金がかかるのでは?」と思われてしまいがちです。しかし、第三者機関である「ASUENE ESG」に評価・表彰してもらえたことで、全社を巻き込みやすい上昇気流を作ることができました。また、ESG評価に先んじて取り組んだからこそ、取引先にも迅速に回答することができ、その信頼感が取引につながっています。当社だけではなく社会全体のESGやサステナビリティを推進するために、取り組むメリットを明文化して、社内にも社外にもその意義を発信していきたいです。
当社は、「パッケージ文化の創造を通じて持続可能な社会の実現に貢献する」を企業使命に掲げています。当社の存在意義を作るために、ESGを通じて社会とつながり、自分たちの取り組みもさらに加速させていきます。
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