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サステナビリティ情報開示のスケジュール見直し後も重要性は変わらない!日本企業企業が備えるべきことについて

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サステナビリティ情報開示のスケジュール見直し後も重要性は変わらない!日本企業企業が備えるべきことについて

サステナビリティ情報の開示義務について、最新動向を踏まえてわかりやすく解説します。サステナビリティ情報の開示は、今や国際的な潮流と言えます。投資家や金融機関は、投資先へサステナビリティ情報の開示を求め、企業もそれに応えるべく、気候変動対策をはじめとする環境問題対応を進めるだけでなく、国際的なフレームワークに沿った情報開示について試行錯誤しています。情報開示と言っても、ただ目の前にあるデータを並べればよいわけではなく、必須となる項目やその他の留意点が多数存在するため、いざ対応しようとすると何から着手すればよいのか迷子になる企業も多く見られます。本記事ではサステナビリティ情報開示義務の概要、日本における開示義務化のスケジュール見直しや今後の展望について取り上げます。

INDEX

サステナビリティ情報とは?開示義務化の概要と背景を解説

サステナビリティ情報とはどういうもので、なぜ開示が必要なのでしょうか。サステナビリティ情報開示義務化の基本について解説します。

サステナビリティ情報開示の概要

日本では「企業内容等の開示に関する内閣府令等」の改正によって2023年3月期決算企業から、有価証券報告書等において「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載欄を新設し、サステナビリティ情報の開示が求められることとなりました。具体的には有価証券報告書の「企業情報」の中で、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」を開示することが求められており、ただし「戦略」「指標及び目標」については、各企業が重要性を踏まえて開示を判断することとされています。また人的資本について、「人材育成方針」や「社内環境整備方針」に加え、当該方針に関する指標の内容や当該指標による目標・実績を開示することも必須となっています。

出典:金融庁「サステナビリティ情報の開示に関する特集ページ」

サステナビリティ情報開示を求められる背景

日本では2050年のカーボンニュートラルを目指すことが、政府によって2010年に宣言され、それに伴いサステナビリティに関する取り組みが企業経営の中心的な課題になりました。サステナビリティ経営に対して投資家の関心も集まるようになり、企業情報開示の主要項目としてサステナビリティ項目を位置づけることが金融審議会ディスクロージャーワーキンググループによって提言されました。国際的にもサステナビリティ情報開示の基準策定などが急速に進んでおり、グローバル投資の観点からもサステナビリティ情報の開示は必然の流れです。

出典:金融庁「企業内容等の開示に関する内閣府令の改正、記述情報の開示の好事例集2022(サステナビリティ情報の開示)の紹介」p25(2023/3/20)

サステナビリティ開示義務化のスケジュールはどう変わった?最新の検討状況と見直しの理由を解説

サステナビリティ情報の開示義務化については、スケジュールが確定しておらず、見直しの論議が行われています。

元々検討されていたスケジュール

サステナビリティ情報開示義務化について当初発表されていたスケジュール案は、東証プライム上場企業について、時価総額3兆円の企業は2027年3月期、時価総額1兆円の企業は2028年3月期からという「案1」もしくは、それぞれ1年遅らせる「案2」でした。いずれの場合もSSBJ基準が義務化され、2030年代にはプライム上場全企業まで対象を順次拡大することとされています。開示された情報の第三者保証については、「案1」では2027年3月期は義務化せず2028年3月期から義務化、「案2」では2028年3月から義務化となっていました。

出典:金融庁「第2回 金融審議会 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ 事務局説明資料」p4(2024/5/14)

最新の検討状況

金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」(以下「金融審議会WG」)は、2025年7月17日に中間論点整理を公表しました。その中ではサステナビリティ情報開示義務化について、以下の案が示されています。

時価総額2027年3月期2028年3月期2029年3月期2030年3月期
中間論点整理3兆円以上適用義務化保証義務化
1兆円以上適用義務化保証義務化
5000億以上適用義務化保証義務化

時価総額5000億未満の企業について適用時期が明示されていないため、「2030年代にはプライム全企業まで拡大」としていた当初案との比較において、一歩後退したと見た一部報道もありました。

出典:金融庁「金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」中間論点整理の公表について」(2025/7/17)
出典:金融庁「サステナビリティ開示基準の適用及び保証制度の導入に向けたロードマップ」p1(2025/7/17)

スケジュールが見直された理由

金融審議会WGの中間論点整理においては、SSBJ基準の適用開始時期について、「プライム市場上場企業の中にも、現行制度に基づくサステナビリティ情報開示への対応状況に差があることや、企業によってリソースに相当ばらつきがあるとの意見もあったことを踏まえると、株式時価総額の規模に応じて段階的に適用していくことが合理的と考えられる」とされています。一方でEUでは2029年3月期から第三者保証付きのサステナビリティ情報開示が義務化されることから、「2028 会計年度よりも前に我が国において第三者保証制度を導入し、当該制度に基づく第三者保証が実施されていることが望ましい」とも言及されています。こうした要素を考慮して、最新案のスケジュールが検討されました。ただしこれはまだ最終結論ではなく、時価総額5,000億円以上の企業については「2025年中」、5,000億円未満企業については「数年後を目途」に、結論を出すことが適当というのが現時点の整理です。出典:金融庁「金融審議会 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ 中間論点整理」p4-7(2025/7/17)

サステナビリティ情報開示の今後の展望:国際動向と企業が押さえるべきポイント

サステナビリティ情報の開示は、国際的な潮流です。サステナビリティ情報開示の今後の展望を解説します。

サステナビリティ情報開示の国際的動向

国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は、2023 年6月に、サステナビリティ関連の情報開示について「ISSB 基準」を公表しており、南米・アジア・オセアニア等の各国で、ISSB 基準の適用に向けた動きが進展することが見込まれています。またEU においては、2023 年1月に企業サステナビリティ開示指令(CSRD)が発効し、企業規模に応じて段階的に、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)に基づく開示が求められている状況です。ちなみに米国では、カリフォルニアやニューヨークなど一部の州で、州内で事業を行う一定の米国法準拠法人に対し、気候関連情報の開示を義務付ける法律が成立もしくは検討されています。

出典:金融庁「金融審議会 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ 中間論点整理」p2(2025/7/17)

日本におけるサステナビリティ情報開示

日本においても、各国でサステナビリティ開示基準に基づく情報開示を制度化する動きがみられる中、国際的な比較可能性を確保することで国内外の投資家から評価を得る必要があると考えられています。さらにグローバル企業にとっては、国際的に比較可能性が確保された基準による情報開示が、各国における開示に係る実務負担を軽減する観点から望ましいとの意見があり、ISSB 基準との整合性が確保されたSSBJ 基準によってサステナビリティ情報の開示を義務付ける方向で検討が進んでいます。

出典:金融庁「金融審議会 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ 中間論点整理」p3-4(2025/7/17)

開示において期待されるポイント

サステナビリティ情報の開示にあたっては、経営陣やガバナンスによるリーダーシップの発揮、経営者の意思表示、経営陣の意向を示すことが重要です。またサステナビリティに関する活動内容の記載だけではなく、活動の結果や活動の過程で何に貢献しようとしているのかについても開示することが求められます。さらに同じ用語であっても、企業と投資家で考え方に違いがあるものがあるため、用語を明確化することも大事です。こうした観点は投資家・アナリスト・有識者が企業のサステナビリティ情報に期待するポイントであり、今後の有価証券報告書において留意すべき内容です。

出典:金融庁「有価証券報告書のサステナビリティに関する考え方及び取組の全般的な開示のポイント」p2(2024/11/8)

まとめ:サステナビリティ情報開示義務化に備え、確実な準備と適切な先行開示をしましょう

サステナビリティ情報開示については、企業規模に応じた適用義務化時期の違いはあっても、国際的な流れに鑑みて、各企業は対応を余儀なくされることが確実です。サステナビリティ情報と言ってもその項目は多岐にわたり、SSBJ基準に準拠する必要もあります。また情報の信頼性を担保するための第三者保証、有用性を向上させるため記載内容の工夫なども求められるため、土壇場の駆け込み対応では不十分なものになってしまうおそれがあります。

サステナビリティ情報開示義務化に備え、早めに確実な準備を行い、任意の先行開示にトライしましょう。

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