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【2025年更新記事!】中小企業向けSBTとは?参加のメリットをご紹介

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【2025年更新記事!】中小企業向けSBTとは?参加のメリットをご紹介

SBT(Science Based Targets)は、CDPや国連グローバルコンパクトなどが運営する国際的な取り組みで、気候科学に基づいて企業に温室効果ガスの削減目標を求めるものです。2015年のパリ協定では「気温上昇を産業革命以前より2℃未満、可能なら1.5℃以内に抑える」ことが合意され、企業にはこれを達成するために、中長期(5~15年)の目標設定と行動が求められています。

このSBTは地球温暖化対策の一環として中小企業を含む多くの企業に注目されており、SBT認定を受けることで国際的な信頼性や企業イメージの向上など、さまざまなメリットが期待できます。企業はSBTが定める認定基準を満たす削減目標を掲げ、その進捗を外部に公開することが必要です。

本記事では、法人の皆さまが知っておくべきSBTの基本情報や認定方法、2024年1月の改訂内容、さらには認定企業の取り組み事例まで、わかりやすく解説します。

INDEX

SBTとは何か

SBTの概要

SBTとはSciense Based Target(科学に基づく目標)の略称で、温室効果ガス削減目標を意味します。2015年のパリ協定では、地球の気温上昇を産業革命前と比べて1.5℃に抑える努力を追求することを世界各国が約束しました。SBTはこれに基づき、各企業が温室効果ガス排出量をどれくらい、どれくらいの期間で削減するか目標設定する取り組みです。SBTは国際的な慈善団体SBTi(SBTイニシアチブ)によって運営されており、SBTiは参加各企業のSBTをとりまとめ、その策定や達成を支援、検証しています。

出典:SIENCE BASED TARGET「ABOUT US」

出典:環境省「環境省 グリーン・バリューチェーンプラットフォーム:国際的な取組」p1

CO2の削減量が最も少ないのが気温上昇を2℃以内に収める目標(2℃:上図の黄緑部分)で、次に少ないのが世界の気温上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準(WB2℃:Well Below 2℃、上図の黄色)、最も多いのが気温上昇を1.5℃以内に収める目標(1.5℃:水色)です。

SBTを設定する各企業は、最低でもWB2℃、可能ならば1.5℃を削減目標とするよう求められています。

SBTに取り組む意義

気候科学に基づくパリ協定での共通基準によって認定された目標であるSBTに取り組むことで、各企業は投資家・顧客・仕入れ先・自社社員などのステークホルダー(利害関係者)に対し、自社がパリ協定に整合する持続可能な企業であることを示すことができます。

その結果投資家からの評価向上、顧客から選別されるリスクの回避や選考される機会の獲得、サプライチェーンの調達リスク低減、社内のイノベーション促進などのメリットが得られます。

出典:環境省「SBT(Science Based Targets)について」p12

SBTが削減対象とするCO2

出典:環境省「環境省 グリーン・バリューチェーンプラットフォーム:国際的な取組」p6

SBTでは、排出削減するべき温室効果ガスを三つのカテゴリーに分類しています。Scope1は、燃料の使用や製品の製造過程で事業者が直接排出する温室効果ガスをさします。Scope2は、電力をはじめとする他者から供給されたものの使用により、間接的に排出する温室効果ガスです。

そして、Scope3は原材料や製品の輸送、従業員の通勤、製品の使用・廃棄などで発生する温室効果ガスの排出です。SBT目標を達成するには自社だけではなく、Scope1+Scope2+Scope3というサプライチェーン全体で、温室効果ガスを削減する必要があります。

SBTへの参加動向

SBTに参加する企業は、世界的に見ても増加の傾向にあります。
インターネット上で公開されているSBT事務局の「ターゲットダッシュボード」には、SBT目標を策定している・またはその策定に取り組んでいる企業が表示されます。企業の目標やコミットメントがWebサイトで公開された年度別にその数を集計すると、下表のとおりとなります(「短期目標」のみ集計、2024年3月13日現在)。

 世界全体内日本企業
年度コミット認定合計コミット認定合計
2015516   
20165712  0
2017 1717 33
201853338178
2019993102 1010
202013187200 1717
202118851570337275
20228061,0441,85017198215
20231,3742,2563,63041451492
20243647011,06519172191

特に2022年以降、世界全体および日本において、参加企業数・認定企業数ともに大きく増加しています。また日本企業については、参加企業における認定企業の割合が大きくなっています。

出典:SCIENCE BASED TARGETS「COMPANIES TAKING ACTION」

特に2020年以降、参加企業数が大幅に増加しています。

出典:環境省「SBT(Science Based Targets)について」p41

国別でみると、日本のSBT参加企業数はイギリスに次ぐ世界第2位です。ただし、2年以内の認定を目指すコミット企業が他国と比べて少ない点は、今後の課題です。

SBT認定の手順

SBT認定を受けるには、SBTiのホームページからコミットし、それから24カ月以内に目標を設定・提出、SBTiの承認を得ます。目標の承認を得るために各企業は、温室効果ガス排出に関する自社の現状や将来の見通しの把握、排出削減の取り組み内容構想、目標達成に向けたロードマップ策定などが必要です。

また承認された目標については社内外のステークホルダーと共有し、その達成状況についてモニタリングを行い情報開示していくことも求められます。

出典:SCIENCE BASED TARGET「SET A TARGET」
出典:環境省「SBT等の達成に向けたGHG排出削減計画策定ガイドブックp4(2021/3)

短期目標、長期目標、ネットゼロ目標の違い

SBTには「短期目標」「長期目標」「ネットゼロ目標」の3種類があります。短期目標は、企業の今後 5~10 年間の排出量削減目標です。長期目標は、ネットゼロ(排出量からCO2吸収量を差し引いた実質排出量が0であること)を達成するために必要な排出削減量です。

ネットゼロ目標は、短期目標と長期目標の両方が含まれます。SBTiは2021年10月に「企業ネットゼロ基準」を発表しており、そのため2022年以降ネットゼロ目標をコミットする企業が増加しています。

出典:SCIENCE BASED TARGET「COMPANIES TAKING ACTION」

中小企業向けSBTとは

SBTの認定を行うSBT事務局は、中小企業向けSBTの独自ガイドラインを設定しました。
通常のSBTと異なる点としては、

・基準年と目標年があらかじめ定められていること
・削減対象をScope1,2に絞っていること
・目標レベルをWB2℃か1.5℃から選ぶこと
・認定費用が通常より安いこと
・承認までのプロセスが簡略化されていること

などが挙げられます。
通常のSBTに比べると、企業の負担が軽くなっており、中小企業にとっても取り組みやすい内容となっています。

中小企業向けSBTの基準が2024年1月から改訂に

SBT事務局は、2024年1月1日以降、SBTにおける中小企業の定義と費用を変更することを発表しました。中小企業の新しい定義づけによって、さらに多くの企業がSBTに参加し、効果的な温室効果ガスの排出削減を行えるようになると考えられています。ただしこの変更は2024年1月1日以降にエントリーする企業にのみ適用され、既にエントリー済みの企業への影響はありません。

    中小企業向けSBT   <参考>通常SBT
対象次のすべてに該当
■スコープ 1 および位置ベースのスコープ 2 の排出量全体で 10,000 tCO2e 未満■海上輸送船を所有・管理していない■非再生可能発電設備を所有・管理していない■金融機関または石油・ガス企業ではない■子会社ではない
上記に加え次の 3つ以上に該当
■従業員数 250 名未満■売上高 <5,000万ユーロ■総資産 <2,500万ユーロ■森林、土地、農業関連企業ではない
特になし
目標年2030年公式申請年から、 5年以上先、10年以内の任意年
基準年2018年 ~ 2023年から選択最新のデータが得られる年での設定を推奨
削減対象範囲Scope1,2排出量Scope1,2,3排出量。但し、Scope3がScope1〜3の合計の40%を超えない場合には、Scope3⽬標設定の必要は無し
目標レベル■Scope1,21.5℃︓少なくとも年4.2%削減■Scope3算定・削減(特定の基準値はなし)下記⽔準を超える削減⽬標を任意に設定■Scope1,21.5℃︓少なくとも年4.2%削減■Scope3Well below 2℃︓少なくとも年2.5%削減
費用■新しい短期目標(維持目標を含む)を設定する、または以前の短期目標を置き換える場合USD1,250■短期目標とネットゼロ目標を設定する場合USD2,500■⽬標妥当性確認サービスはUSD9,500(外税) (最⼤2回の⽬標評価を受けられる)■以降の⽬標再提出は、1回USD4,750(外税)
承認までのプロセス⽬標提出後、⾃動的に承認され、SBTi Webサイトに掲載⽬標提出後、事務局による審査(最⼤30営業⽇)が⾏われる。事務局からの質問が送られる場合もある。

出典:環境省「環境省 グリーン・バリューチェーンプラットフォーム:国際的な取組」p164
出典:SCIENCE BASED TARGETS「SBTi Announces Updated SME Definition and Fees」(2023/11/1)

費用についてはインフレが考慮されていて、これまで1000ドルだった中小企業向けの価格が1250ドルへ引き上がります。また、発展途上国にある収益が1000万ドル未満の中小企業では、この費用は免除されます。

出典:SCIENCE BASED TARGETS「SBTi Announces Updated SME Definition and Fees」(2023/11/1)

中小企業向けSBTに参加するメリット

中小企業がSBTに参加するメリットは、大きく分けて2点あります。

(1)顧客に環境対策をアピールできる

1つ目のメリットは、顧客に対して環境対策に積極的に取り組む企業であるとアピールできることです。WB2℃もしくは1.5℃目標を目指すSBTへの参加は、中小企業にとって大きな負担となることですが、それに取り組んでいると表明することによって、環境に配慮した企業であることをアピールできます。

出典:環境省「【中小企業等向け SBT・再エネ 100%目標設定支援事業】募集要項」p2

(2)取引先のCO2排出削減に貢献できる

2つ目のメリットは、取引先のCO2排出削減に貢献できることです。SBT目標をクリアするには、自社のCO2削減努力だけでは不十分で、サプライチェーン全体でのCO2削減が必要となります。

中小企業が自社でSBT目標を設定し、温室効果ガスの排出削減に努力することは、自社と取引する企業のCO2排出削減にもつながります。それにより、取引先との良好な関係や新規顧客の獲得につながる可能性があります。

出典:環境省「【中小企業等向け SBT・再エネ 100%目標設定支援事業】募集要項」

中小企業によるSBT取り組み事例

(1)株式会社篠原化学

出典:環境省「株式会社篠原化学」(P2)

株式会社篠原化学(以下篠原化学)は、寝具の企画・製造・卸し・輸入・販売を行う企業です。篠原化学のCO2排出量内訳は、自社の直接排出であるScope1が45%、電力使用で発生するCO2を示すScope2が47.5%となっています。

Scope1・2の排出削減につなげるため、篠原化学では本社やショールーム、倉庫で使用する電力の再エネ化を推進します。目標達成は2030年で、サプライチェーン全体のCO2排出量を示すScope3については、サプライヤーと連携してCO2排出量が少ない素材にすることで、2018年比50%削減を目指します。

今後の課題として、Scope1削減のためにガソリン車からEV車に変更する必要性と、Scope2削減のための再エネ由来電力の使用、Scope3達成のためのサプライヤーとの連携が必要だとしています。

出典:環境省「株式会社篠原化学」p1,2,4

(2)日本ウエストン株式会社

日本ウエストン株式会社は、工業用ウエスや手袋等のレンタル・クリーニング・製造販売を行っている事業者です。日本ウエストンのCO2排出量内訳は、Scope1が79%、Scope2が21%となっています。

Scope1・2のCO2排出量を削減するため、重油ボイラーからガスボイラーへの転換、ハイブリッドトラックへの転換、再エネ由来電力の100%使用などを行います。今後の課題としてはガスボイラー転換の際の運用コスト削減をあげています。

出典:環境省「⽇本ウエストン株式会社」p1,2

(3)株式会社浜田

出典:環境省「株式会社浜⽥」

株式会社浜田は、産業廃棄物処理業やスクラップ業を営む企業です。CO2の排出内訳は、Scope1が68%、Scope2が32%です。

Scope1・2のCO2排出量を削減するため、ガソリン・軽油の使用削減や再エネ電力への切り替え、Jクレジットの利用などで排出削減を目指します。運搬車両をハイブリッド車や電気自動車に切り替える際のコストなどが課題です。

出典:環境省「株式会社浜⽥」p1,2

まとめ:SBT参加は企業の環境問題への取り組みをアピールするチャンス!

パリ協定の成立やアメリカのパリ協定復帰、日本のカーボンニュートラル宣言など温室効果ガスの排出削減は急務となっています。これは、大企業に限ったことではありません。

SBTでは、事業者自身のCO2排出削減だけではなく、サプライチェーン全体でのCO2排出削減が求められます。SBTに参加することは、こうした要請にこたえる能力があるというアピールになり、新しいビジネスチャンスとなるでしょう。

自社の環境問題に関する取り組みや、サプライヤーとしてCO2削減に協力できることを示すことは、今後の中小企業の戦略として極めて重要になるのではないでしょうか。

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