経営・戦略

EVとHVの違いとは?自動車業界における「脱炭素」への取り組みと次世代自動車の種類について

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EVとHVの違いとは?自動車業界における「脱炭素」への取り組みと次世代自動車の種類について

世界的な脱炭素の潮流は、自動車業界に容赦なく押し寄せています。大手自動車メーカーのみならず、部品を供給する中小企業も巻き込み、業界全体が否応なく変革を迫られています。背景にあるのは、運輸部門全体の排出削減への圧力、厳しさを増す環境規制、そして消費者の意識変化といった、無視できない現実です。

こうした状況下で、自動車業界はあらゆる手段を講じています。新たな燃料の開発、生産・物流工程の環境負荷低減、そして次世代自動車の普及。これらは、もはや選択肢ではなく、生き残りをかけた必須事項となっています。

次世代自動車の代表であるEV(電気自動車)とHV(ハイブリッド車)は、環境性能の高さで注目されていますが、その構造と特性は大きく異なります。EVは電気のみで走行するため、排出ガスはゼロ。しかし、充電インフラの不足や航続距離の短さといった課題も抱えています。一方、HVはエンジンとモーターを併用し、効率的な走行を追求。既存のガソリンインフラを利用できるメリットはありますが、完全な脱炭素とは言えません。

この記事では、自動車産業を取り巻く脱炭素の現状を、背景から対策、そして次世代自動車の動向まで、多角的に考察します。環境技術の進化、そしてEV・HVを含む次世代自動車の4つのタイプ、それぞれの特性、利点、そして克服すべき課題について、網羅的に見ていくことで、自動車産業の未来を読み解く一助とします。

INDEX

自動車業界が脱炭素に取り組む理由

(1)カーボンニュートラル達成のため

2020年10月26日、菅総理大臣は所信表明演説において2050年までのカーボンニュートラルを目指すことを発表しました。

需要側のカーボンニュートラルに向けたイメージ

出典:資源エネルギー庁「2050年カーボンニュートラルの実現に向けた検討」(2021/1/7)(p4)

現在、化石燃料に大きく依存している状態ですが、省エネ技術の開発や脱炭素エネルギーの導入を拡大することで、CO2の排出量を減らそうとしています。

日本のCO2排出量と世界のエネルギー起源CO2排出量

出典:資源エネルギー庁「2050年カーボンニュートラルの実現に向けた検討」(2021/1/7)(p5)

では、自動車を含む運輸部門のCO2排出量はどのくらいの割合なのでしょうか。日本で排出されるCO2は年間で約11.4億トン。その中で運輸部門は2.0億トンと約17.5%を占めます。

エネルギー部門や産業部門と比べると排出量は小さいですが、十分な削減余地があるといえるでしょう。

(2)世界的なエンジン車禁止の潮流

各国の電動化政策

出典:資源エネルギー庁「2050年カーボンニュートラルの実現に向けた検討」(2021/1/7)(p74)

自動車のCO2排出削減は、世界的な潮流となっています。なかでも、自動車については急速な電気自動車への置き換えが進んでいます。

たとえば、イギリスでは2030年に内燃機関車(ディーゼル車やガソリン車など内部で燃料を燃やし、動力を得る車のこと)の販売が禁止され、ハイブリッド車も2035年で販売停止となります。

フランスでは2040年に内燃機関車の販売禁止、中国は2035年までの全車電動化等を打ち出しています。日本も2035年までに新車販売で電動車を100%にするという目標を掲げています。

運輸部門の二酸化炭素排出の現状

ここで、自動車を含む運輸部門のCO2排出量について詳しく見ていきましょう。運輸部門における二酸化炭素排出量

出典:国土交通省「環境:運輸部門における二酸化炭素排出量」(2021/4/27)

運輸部門のCO2排出量の内訳は、自家用乗用車で45.9%、営業用貨物車で20.4%、自家用の貨物車で16.5%、残りを航空機や船舶、鉄道が占めています。

運輸部門における二酸化炭素排出量の推移

出典:国土交通省「環境:運輸部門における二酸化炭素排出量」(2021/4/27)

運輸部門全体でのCO2排出量は、2000年以降、減少しつつあります。もっとも割合が多い自動車用乗用車においては、CO2排出量が最も多い2001年と比べ、2019年度の排出量が5,100万トンも削減しています。

これ以上、CO2を削減するには、今までになかったさらなる技術革新が必要となるでしょう。

自動車の脱炭素化への取り組み

燃費の改善

CO2の排出削減を達成するため、自動車業界では脱炭素化への取り組みを続けてきました。

車全体の技術改善

出典:環境省COOL CHICE「エコカーを選んでみませんか?|脱炭素社会づくりに貢献する製品で一歩先の賢い生活!

たとえば、ボデーの形を改良することで空気抵抗を低減することや、車体重量の軽量化、駆動系の改良、エンジン性能の向上などにより、燃費を向上させ燃料使用量を減らしました。それにより、CO2の排出も削減されてきたわけです。

移動・輸送(運輸部門)のエネルギー消費量の推移

出典:環境省COOL CHICE「エコカーを選んでみませんか?|脱炭素社会づくりに貢献する製品で一歩先の賢い生活!

また、実質GDPが成長する中でも、運輸部門はエネルギー消費量を減らしてきました。これは、たゆまぬ技術革新の成果だといえます。

次世代自動車の種類

次世代に向けた自動車はHV・PHV・EV・FCVなどの種類に分けることができます。代表的な次世代自動車の特徴についてまとめます。

開発が進む多様な次世代自動車

出典:環境省COOL CHICE「エコカーを選んでみませんか?|脱炭素社会づくりに貢献する製品で一歩先の賢い生活!

ガソリン車に代わる次世代自動車の開発が進んでいます。代表的なものとしてハイブリッド車やバイオ燃料対応車、電気自動車、燃料電池自動車などがあります。

出典:環境省COOL CHICE「エコカーを選んでみませんか?|脱炭素社会づくりに貢献する製品で一歩先の賢い生活!

これらの次世代自動車は、いずれもガソリン車よりも燃費が良くなっています。電気自動車に用いられる電動モーターが、ガソリン車よりも効率に優れているためです。

HV(ハイブリッド)車

HVはハイブリッド車のことです。ハイブリッド車とはガソリンを燃料とするエンジンと電気を動力源とするモーターを組み合わせた自動車のことです。外部から充電することはできず、エンジンや減速時のエネルギーを活用してバッテリーに充電します。

2021年の販売台数は102万台余でガソリン車の118万台に迫る勢いで、最も普及している次世代自動車だといえます。

出典:日本自動車販売協会連合会「燃料別販売台数(乗用車)」

PHV(プラグインハイブリッド)車

PHVとは外部から充電できるHV車のことです。販売台数はおよそ2万2千台ほどで全体の1%ほどです。2022年にはもう少し台数が増える見込みですが、それでもハイブリッド車に遠く及ばない数字です。

外部電源を利用して満充電にすると、ガソリン使用量を大幅に減らせます。充電環境があれば、年間CO2排出量をかなり減らすことができます。

出典:日本自動車販売協会連合会「燃料別販売台数(乗用車)」

EV(電気自動)車

EVはバッテリーに充電された電力で走行する自動車のことです。EV車はガソリンエンジンを使用しないため、走行中にCO2を排出しません。また、ガソリン車に比べると駆動音が小さいため非常に静かな自動車だといえます。

2021年度の販売台数は約2万1千台で、シェアは1%未満です。ヨーロッパやアメリカのカリフォルニア州ではEVへの移行が進められています。

出典:日本自動車販売協会連合会「燃料別販売台数(乗用車)」

FCV(燃料電池)車

FCV車は酸素と水素で電力を作り、その電力でモーターを動かして走行する自動車のことです。燃料電池という名前がついていますが、発電装置と考えるとわかりやすくなります。

酸素と水素を化合させ電気と水を作り出すため、走行中にCO2を排出しないというメリットがあります。販売台数は約2千台でEVやFCVの10分の1以下と、まだまだ普及していない車種だといえます。

出典:日本自動車販売協会連合会「燃料別販売台数(乗用車)」

次世代自動車の開発・普及

ハイブリッド車は、2010年以降急速に台数を増やしてきました。電気自動車と比べると圧倒的といってもよく、日本の次世代自動車の主力といえるでしょう。

しかし、イギリスやフランスの基準に照らし合わせると、ハイブリッド車は削減の対象となっています。今後、日本車を輸出するにあたっては、ハイブリッド車以外の自動車の開発・普及に力を入れる必要があります。

次世代自動車保有台数の推移

出典:環境省COOL CHICE「エコカーを選んでみませんか?|脱炭素社会づくりに貢献する製品で一歩先の賢い生活!

HV車のメリット・デメリット

現在、ガソリン車に近いシェアを占めているハイブリッド車にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょう

(1)メリット

ハイブリッド車のメリットは、従来のガソリン車に比べ燃費性能が高いことです。理由は、ガソリン車が捨ててしまっていた熱を回収し、エネルギーを再利用しているからです。その結果、ガソリン消費が抑えられ、ガソリン車よりもCO2の排出量を少なくすることができます。

出典:環境展望台「ハイブリッド車(HV) – 環境技術解説」

(2)デメリット

デメリットは、他の次世代自動車よりもCO2排出量が多くなってしまうことです。一般的なハイブリッド車は、プラグインハイブリッド車と異なり、外部電源を使ったバッテリー充電ができません。そのため、走行中のCO2排出量をゼロにすることができません。

出典:資源エネルギー庁「自動車の“脱炭素化”のいま(前編)~日本の戦略は?電動車はどのくらい売れている?」

EV車のメリット・デメリット

欧米や中国を中心に生産台数が増えているのがEVです。EVのメリット・デメリットについてまとめます。

(1)メリット

一番のメリットは走行中にCO2を全く排出しないことです。石油や天然ガスといった化石燃料を使用しないため、環境にやさしい自動車とされています。既に、欧米諸国は自動車の電動化に大きく舵を切っています。

各国の電動化目標

出典:資源エネルギー庁「自動車の“脱炭素化”のいま(前編)~日本の戦略は?電動車はどのくらい売れている?」

EUは2035年までにFVやFCVの割合を100%とするとともに、HEV(HV)やPHEV(PHV)、ICEは対象外とし、脱ガソリンエンジンを明確にしました。イギリスやフランスでもガソリン車(内燃機関車)が販売禁止となります。

こうした動きはCO2排出削減を積極的に進めようとする欧州の考え方を如実に表しています。

(2)デメリット

CO2を排出しないという点で大きなメリットを有するEVですが、解決すべき課題がまだまだ残っています。主なデメリットを整理します。

  • コストが高い
  • 航続距離が短い
  • 充電時間が長い

電池製造時にCO2を排出する先ほど見たとおり、すでに普及しているハイブリッド車と比べるとEVのコストは高く、購入に二の足を踏んでしまいます。航続距離が短いのもネックです。長距離を走るトラックなどで使用するにはまだまだ改良が必要です。

加えて、充電時間の長さが問題となっています。機種やエンジンの状態などにもよりますが、ガソリン車のように数分で燃料供給できるものとはなっていません。また、バッテリー(電池)製造時にCO2を排出してしまうことも改善が必要です。

出典:資源エネルギー庁「自動車の“脱炭素化”のいま(前編)~日本の戦略は?電動車はどのくらい売れている?」

HV車とEV車の違い

HVとEVにはどのような違いがあるのでしょうか。違いを2点とりあげます。

(1)普及率の違い

1つ目の違いは普及率です。新車販売台数という視点で見れば、ハイブリッド車はガソリン車と肩を並べる水準となっています。それに比べ、電気自動車ははるかに小さなシェアを占めているにすぎません。

その理由として、車両本体価格の高さやガソリン車ほどの利便性が無いことにより、車種の選択肢が少ないことがEV普及を妨げていることが挙げられます。

ですが、近年低価格の軽EVや航続距離が300km以上の車種が登場したことで、車種の選択肢が広がり今後EVシフトが進む可能性があります。

出典:東京電力エナジーパートナーズ【最新版】電気自動車(EV)の普及率はどのくらい?「日本で普及しない」は本当?

(2)HVはゼロエミッション(ZEV)車ではない

2つ目の違いはHVはゼロエミッション車ではないことです。ゼロエミッション車とはCO2を全く排出しない自動車のことです。

欧米諸国は脱炭素の動きを加速し、走行中にCO2を排出する自動車に対する規制を強めています。将来的に、欧米ではガソリン車・HV・PHVの発売が禁止され、電気自動車や燃料電池車のみとなる公算が高まっています。

出典:資源エネルギー庁「自動車の“脱炭素化”のいま(前編)~日本の戦略は?電動車はどのくらい売れている?」

まとめ:カーボンニュートラルな経営を推進するなら社用車のEV化が必須

今回は自動車業界における脱炭素に向けた動向と次世代自動車についてまとめました。日本ではハイブリッド車が次世代自動車に区分されていますが、欧米ではHVはZEVとみなされず、規制の対象となっています。

今後、CO2を排出しないカーボンニュートラルの考え方が進めば、中小企業もそれに適応する必要があります。その方法の一つとして、社用車をEVにすることが挙げられます。かつてに比べEVの利便性は高まっており、社用車としても十分使用できる水準になっています。中小企業もEVシフトを進め、CO2の排出削減に舵を切る必要があるのではないでしょうか。

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