COP25が世界に与えた影響とは?|パリ協定積み残しルールを議論
- 2022年06月15日
- その他
パリ協定の本格的な実施直前となる2019年12月に、COP25(国連気候変動枠組条約締約国会議)がスペインのマドリードで開催されました。COP25ではCOP24で合意に至らなかった市場メカニズム実施のルール作りや世界各国の温室効果ガス排出量削減目標の引き上げが大きな争点となりました。
この記事では、COP25の議論が結果や課題などについてご紹介します。COP25についての理解を深め、日本や世界の動向を把握することで、企業はどのように脱炭素に向け取り組むか検討につなげていただければと思います。
目次
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COP25とは?パリ協定の積み残しルールや温室効果ガス排出量削減目標引き上げの議論が紛糾
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COP25の結果〜パリ協定の積み残しルールの詳細決定
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COP25の結果〜温室効果ガス排出量削減目標の引き上げ
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まとめ:COP25についての理解を深め、日本や世界の動向を把握しよう!
1. COP25とは?パリ協定の積み残しルールや温室効果ガス排出量削減目標引き上げの議論が紛糾
COPの正式名称は国連気候変動枠組条約締約国会議で、1992年に採択された国連気候変動枠組条約に基づき、1995年から毎年開催されています。第25回目となる。
COP25の開催地はスペイン・マドリードで、開催期間は2019年12月2日から12月15日までです。COPでは毎年様々な課題について議論されていますが、共通背景にあるのが世界が一丸となった温暖化に対する取り組みです。ここではCOP25で議論された課題についてご紹介します。
出典:環境省『国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)・京都議定書締約国会合(CMP)・パリ協定締約国会合(CMA)』
パリ協定の積み残しルールの詳細決定
2018年にポーランドで開催されたCOP24において、パリ協定を実施するための大筋のルールが決定しました。
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各国が設定する温室効果ガス排出量削減のための貢献内容に書くべき内容。
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各国が報告する内容とそれを確認レビューする方法。
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世界全体での進捗状況を確認する方法。
市場メカニズムの実施ルールなどCOP24で合意に至らなかったルールがCOP25で引き続がれ議論されることになりました。
出典:資源エネルギー庁『温暖化対策の国際会議「COP24」で、「パリ協定」を実施するためのルールが決定』(2019/4/23)
各国の温室効果ガス排出削減目標の引き上げ
パリ協定のもと各国が設定した温室効果ガス排出量削減目標のままでは、2050年までのカーボンニュートラル実現は困難とし、COP25で温室効果ガス排出量削減目標の引き上げが議論されました。主要国の温室効果ガス排出量削減の中期目標は以下のようになっています。
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日本 2013年度比で26%減
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イギリス 1990年度比で57%減
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アメリカ 2005年度比で28%減
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フランス 1990年度比で40%減
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ドイツ 1990年度比で55%減
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EU 1990年度比で40%減
出典:資源エネルギー庁『「パリ協定」のもとで進む、世界の温室効果ガス削減の取り組み① 各国の進捗は、今どうなっているの?』(2019/5/14)
2. COP25の結果〜パリ協定の積み残しルールの詳細決定
COP25の争点の1つが市場メカニズムの実施に関する詳細ルールの決定です。ここでは、議論の結果と合意に至らなかった背景についてご紹介します。
議論の結果
COP24から議論されている市場メカニズムの実施に関する詳細ルールは、COP25においても合意に至らずCOP26で引き続き議論されることになりました。日本の二国間クレジットのように、他国と協力して両国の温室効果ガス排出量の削減を目指す国家間の排出量取引制度などが市場メカニズムに含まれます。
出典:環境省『気候変動枠組条約COP25と我が国の長期戦略』(2020/2)(p.14.15)
なぜ合意に至らなかったのか?
市場メカニズムの実施に関する詳細ルールが合意に至らなかった背景にあるのが
京都議定書のもとで発行されたCDM(クリーン開発メカニズム)の取り扱いとダブルカウント問題です。CDMは京都議定書のもとで使用されていたクレジットですが、パリ協定以降も引き続き使用できるかについて意見が対立しました。
この他に意見が対立したのが、温室効果ガス排出量のダブルカウントを防止するためのルールです。このルールをいかに厳格に作るかが議論されましたが、意見がまとまらずに合意は見送りとなりました。
出典:環境省『気候変動枠組条約COP25と我が国の長期戦略』(2020/2)(p.17)
3. COP25の結果〜温室効果ガス排出削減目標の引き上げ
COP25において主要な議論テーマとなったのが、世界各国における温室効果ガス削減量削減目標の引き上げです。ここでは議論の結果と、世界各国が示した考えについてご紹介します。
議論の結果
COP25は、2050年までのカーボンニュートラル実現に向け、世界各国に温室効果ガス排出量削減目標引き上げを訴える場でした。COP25の参加国は来年2021年にグラスゴーで開催されるCOP26までに、新しい計画を示すことで合意に至りました。
出典:BBC NEWS『COP25が閉幕 会期過去最長も、妥協の合意だけ』(2019/12/16)
日本を含む世界の目標引き上げに関する考え
COP25において、COP26までに新たな温室効果ガス排出量削減目標を計画するということで、世界各国が合意に至りました。2021年10月31日からイギリスのグラスゴーで開催されるCOP26に先駆け世界各国が新しい削減目標を提出しましたが、この目標では2030年における温室効果ガス排出量が10年比で約16%も増加すると条約事務局からの指摘を受けています。
出典:東京新聞『温室効果ガスの排出削減は不十分…各国の目標引き上げが焦点 英国で31日開幕のCOP26』(2021/10/28)
4. まとめ:COP25についての理解を深め、日本や世界の動向を把握しよう!
この記事では2019年12月にマドリードで開催されたCOP25での議論や議論結果、残された課題などについてご紹介しました。COP25はパリ協定が始まる直前となる重要な会合でしたが、市場メカニズムの実施ルールはCOP26に引き継がれ、温室効果ガス排出量削減の新たな目標も引き継がれることになりました。
COPは世界共通の温暖化対策への取り組みですので、内容を理解することで、日本を含む世界全体の脱炭素への姿勢や取り組みが見えてきます。脱炭素への取り組みは、持続可能な企業であるために欠かせません。COP25などCOPへの理解を深めることで世界の脱炭素への動向を把握し、企業戦略に役立てていただければと思います。