3Rから次の未来へ!アップサイクル製品とは?そのメリットや事例を紹介
- 2022年06月15日
- SDGs・ESG
アップサイクル製品・アップサイクルブランドというキーワードを聞いたことがあるでしょうか?地球温暖化が問題となり、資源の再利用の推進から3R(リデュース・リユース・リサイクル)が注目されています。アップサイクルはこの取り組みのひとつで今後この3Rの普及につながると期待されています。
ここではこのアップサイクルについて解説していきます。マーケットとしても注目される分野となりますので本記事を通して今後の3R活動の未来が見えてくると思います。
目次
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ゴミを生まれ変わらせる!アップサイクル製品とは?
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これからの動きに注目!政府の取り組み
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日本でも人気!アップサイクルブランドの紹介
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【まとめ】企業が牽引!アップサイクル製品は新しいビジネスへ
1. ゴミを生まれ変わらせる!アップサイクル製品とは?
アップサイクル・ダウンサイクル
「アップサイクル」とは、古着や製造工程で出る余り布、建築廃材や古い家具など、本来は廃棄されるものを使用し、新しいアイデアや発想を取り入れ、元のものにはなかった価値を付加したり、まったく別の用途に使用する製品に作り変えたりしたりすることです。ここでいう「アップ」とは製品の「価値を上げる」という意味になります。
リユース・リサイクルによって利用されるものは、使用により消耗してしまった製品の再利用となり、低品質となってしまうため「ダウンサイクル」と呼ばれます。
例として衣料品で考えると、古着の再利用として開発途上国に送られたり、清掃用として利用されたりすることを「ダウンサイクル」、古着を作り直し、付加価値を与えて新しい製品として利用することが「アップサイクル」となるわけです。
リユース・リサイクル・リメイクとの違いは?
前述した通り、リユースは「再利用する」、リサイクルは「原料化し、同製品または類似製品の原料として利用する」ことで、元の状態より低品質となるため「ダウンサイクル」となります。
リメイクとの線引きは難しいところです。不用品の素材・特徴を活かして作り直すという点では同じですが、アップサイクルは新しい価値を付加し、まったく新しい製品に作り変えるという点で差別されます。
アップサイクルのメリット
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製造に伴うエネルギーの減少と低コスト化
リサイクルのように一度原料化することがなく、製品を分解したり溶かしたりしないので、加工のための工場等の建設も必要なく、製造へのエネルギー消費を抑えることができます。それにより低コストで利用できるのです。
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製品自体の寿命の延長
リメイク・リユースは新しい製品となったとしてもその製品自体の消耗はそれほど変わりません。つまり製品寿命を伸ばすことは難しいのです。アップサイクル製品はもとの製品に付加価値をつけることでまったく新しい製品となりますので製品の寿命を伸ばすことができます。
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SDGs社会への貢献
製造エネルギーの減少が図られ、製品の寿命を伸ばすことは地球への負担を減らすことができ、より地球環境に優しい製品の製造が可能となります。
2. これからの動きに注目!政府の取り組み
日本でもアップサイクルの動きは注目されていますが先行している欧州と比べるとまだ認知度は高くはありません。ここでは環境省によるアップサイクルへの取り組みについてご紹介します。
〈環境省〉サスティナブルファッション
環境省では、ファッションと環境問題についての調査がおこなわれています。調査によると、原材料調達から製造段階までに排出される環境負荷の総量は、年間
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CO2排出 約90,000kt
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水消費量 約83億㎥
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端材等排出量 約45,000t
と試算されています。つまり、服1着あたりのCO2排出量はペットボトル(500ml)約255本の製造分と等しく、1着あたりの水消費量も浴槽約11杯分にもなります。そして手放す際は68%が可燃・不燃ゴミとなっています。
そして廃棄される衣類の量は年間で約48万トンとなり、毎日大型トラック130台分の衣類が廃棄されている計算です。
以上の観点から環境省では、消費者と企業に対してサステナブルファッションへの取り組みを求めています。この中でアップサイクルへの取り組みもあげられています。
3. 日本でも人気!アップサイクルブランドの紹介
では実際にアップサイクル事業を展開しているブランドについてご紹介します。ファッション業界についてはすでに多数の企業がアップサイクルブランドを立ち上げており、日本でも多くのブランドが展開されています。
フライターグは1993年にスイスのチューリヒで創業したバッグのブランドです。使用済みの幌や、自転車のチューブ、車のシートベルトなどを素材としてバッグや、ウォレット、アクセサリーなどの製造をおこなっています。また、「F-ABRIC」という生分解性100%の素材を開発し、環境問題に積極的に取り組んでいます。
2009年にイタリアのフィレンツェで誕生したウォッチブランドです。大型の家具や、フローリングの端材を文字盤やベルトに使用した腕時計を製造しています。また、一つの時計を購入してもらうごとに1本の木を植える活動をおこなっており、今まで60万本以上を植樹しています。
2001年にアメリカ・ロサンゼルスで創業したスニーカーブランドです。海洋プラスチックごみや、サボテン、100%天然ゴムなど環境に優しい素材を使用し、履き心地や質感にも妥協のない高品質な製品を製造しています。
東京・南青山で2006年創業のバックブランドです。廃タイヤのチューブを原材料として1点1点手作業で製造されています。環境問題のほか、売上の一部をWWFへ寄付したり、ネパールの学校設立支援など、SDGsgへの取り組みもおこなっています。
リサイクルペットボトルから作られる糸をアッパーデザインに使用し、工程をミニマムにすることで地球環境に配慮したレディースシューズブランドです。付属のシューキーパーは、トウモロコシやキャッサバのでんぷん質からうまれた植物由来の素材となっている徹底ぶりです。
日本のソックスブランドで、廃棄された衣料品や、工場で発生する端材を糸の原料とし、リサイクルペットボトルをブレンドし、製造されています。また植物の種を練りこんだリサイクルペーパーや、廃棄食材を使用した染料なども使用しています。
海洋プラスチックを素材としたアクセサリーの製造をおこなっています。2019年に金沢で創業し、スタッフ自ら海岸でプラスチック拾いをおこなうところからスタートしており、現在では北海道・小樽や、神奈川・茅ヶ崎、鹿児島や沖縄の石垣島まで海洋プラスチック収集の輪が広がっています。
アップサイクルは衣類だけではありません。食品の分野でも活用がおこなわれています。ダイセル社を主体とした企業共同体のプロジェクトで、こんにゃくの製造過程で捨てられたり肥料になっていた「飛び粉」に含まれる「こんにゃくセラミド」をサプリメントや健康食品としてアップサイクルし製造しています。
4. 【まとめ】企業が牽引!アップサイクル製品は新しいビジネスへ
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アップサイクルとは、本来は廃棄されるものを使用し、新しいアイデアや発想を取り入れ、元のものにはなかった価値を付加したり、まったく別の用途に使用する製品に作り変えたりしたりすること。
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リユース・リサイクルは、使用により消耗してしまった製品の再利用となり、低品質となってしまうため「ダウンサイクル」と呼ばれる。またリメイクとの違いは、もとの製品に別の価値をつけることでまったく新しい製品という点で区別される。
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アップサイクルは加工のためのエネルギー消費を抑えることができ、製品寿命を伸ばせるのでSDGsの観点でも地球環境に優しい取り組みとなっている。
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環境省では、「サステナブルファッション」の取り組みの一つとしてアップサイクルを推進している。
日本ではまだこれからの取り組みとなっていますが、衣料系の企業を中心に取り組みが進んでいます。今後需要の伸びも期待でき、新しいマーケットとして拡大が予測されます。「アップサイクル」の取り組みに注目していきましょう。