アジア・ゼロエミッション共同体（AZEC）とは？｜AZEC構想の概要とその意義を解説

2025年01月14日
CO2算定

気候変動が深刻化する中、日本が提唱する「AZEC構想」（アジア・ゼロエミッション共同体）が注目を集めています。この構想は、アジア各国が協力し、持続可能なエネルギー社会を目指す取り組みです。日本は最先端の技術と資金を提供し、経済成長と脱炭素化の両立を図ります。

本記事では、AZEC構想の概要や各国の取り組み、この構想がもたらす可能性について簡潔に解説します。アジアが共に目指す未来の姿を一緒に探ってみませんか？

1.AZEC構想とは？

AZEC構想とは？

AZEC構想（アジア・ゼロエミッション共同体）は、日本が提唱した地域的な脱炭素化を目指す国際協力プロジェクトです。2023年2月に正式発表され、ASEAN加盟国を含むアジア諸国が参加しています。

この構想では、日本が水素エネルギーやアンモニア燃料などの先進的な脱炭素技術を提供し、各国のエネルギー事情に配慮した柔軟な計画を推進。「経済成長と脱炭素の両立」を掲げ、アジア全体のエネルギー転換と経済成長を支える基盤として期待されています。

今後、AZEC構想は地域全体のエネルギー政策において重要な役割を果たすと見込まれています。　

出典：アジアの脱炭素化を促進！「AZEC構想」（前編）日本はなぜ、アジアと協力するの？

出典：アジアの脱炭素化を促進！「AZEC構想」（後編）日本企業の先進的な取り組み

出典：アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)閣僚会合及びAZEC官民投資フォーラムを開催しました

出典：アジア・ゼロエミッション共同体（AZEC）首脳会合｜外務省

脱炭素を目指すための基本原則

AZEC構想は、各国の経済発展段階に応じた目標を設定する柔軟な取り組みが特徴です。再生可能エネルギーが普及している国は技術拡大や効率向上を目指し、化石燃料依存が高い国ではエネルギーミックス改善や段階的なクリーンエネルギー導入を支援します。

例えば、インドネシアでは天然ガスを一時的なブリッジ燃料として活用しながら、再生可能エネルギーの拡大を進めています。このように、短期的な現実的対策と長期的な環境目標を両立させるのがAZEC構想の大きな特徴です。

出典：アジアの脱炭素化を促進！「AZEC構想」（前編）日本はなぜ、アジアと協力するの？

出典：アジアの脱炭素化を促進！「AZEC構想」（後編）日本企業の先進的な取り組み

出典：アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)閣僚会合及びAZEC官民投資フォーラムを開催しました

出典：アジア・ゼロエミッション共同体（AZEC）首脳会合｜外務省

AZEC構想の具体的な成果

日本はAZEC構想の実現に向け、閣僚会合や官民投資フォーラムを開催し、アジア各国と脱炭素技術や資金支援の計画を共有しています。また、日本企業は炭素回収・貯留（CCS）技術や水素エネルギー供給チェーンの構築など、先進的な取り組みを紹介。これにより、各国が直面する課題に対応した現実的な解決策を提示し、構想の実効性を高めています。

今後は、これらの成果を基に、各国が独自の目標を達成するための具体的支援策が求められます。

出典：アジアの脱炭素化を促進！「AZEC構想」（前編）日本はなぜ、アジアと協力するの？

出典：アジアの脱炭素化を促進！「AZEC構想」（後編）日本企業の先進的な取り組み

出典：アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)閣僚会合及びAZEC官民投資フォーラムを開催しました

出典：アジア・ゼロエミッション共同体（AZEC）首脳会合｜外務省

2.諸国におけるAZECの考え方

日本は、AZEC構想を国家戦略として位置付け、国内技術を活用しアジア地域の持続可能なエネルギー転換を支援しています。水素やアンモニアを燃料とした火力発電技術、二酸化炭素回収・貯留（CCS）技術など、国内で実用化された脱炭素技術を各国に移転することで、脱炭素化の波及効果を高めています。

また、ベトナムでの再生可能エネルギー施設導入やフィリピンでのエネルギー効率向上プロジェクトなど、エネルギーインフラ整備にも積極的に取り組んでいます。さらに、公的機関や民間金融機関を通じ、AZEC関連プロジェクトに数十億円規模の資金支援を実施。「アジアエネルギートランジションイニシアティブ（AETI）」を通じて、具体的なインフラ整備や技術開発を進めています。

これにより、日本はアジア地域の経済発展と脱炭素化を両立させる中心的な役割を担っています。

出典：アジアの脱炭素化を促進！「AZEC構想」（前編）日本はなぜ、アジアと協力するの？

出典：アジアの脱炭素化を促進！「AZEC構想」（後編）日本企業の先進的な取り組み

出典：アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)閣僚会合及びAZEC官民投資フォーラムを開催しました

出典：アジア・ゼロエミッション共同体（AZEC）首脳会合｜外務省

諸外国におけるAZEC構想の取り組み

AZEC構想（アジア・ゼロエミッション共同体）は、日本が提唱するアジア地域の脱炭素化を目指した国際協力枠組みです。各国は、自国の経済状況やエネルギー事情に応じた具体的な取り組みを進めています。以下に主要国の事例を紹介します。

1. インドネシア

再生可能エネルギーの導入を推進：
地熱発電の開発に注力し、日本企業との協力で新たな地熱発電所の建設プロジェクトを進行中。
成果：化石燃料依存を減らし、持続可能なエネルギー供給を目指す。

2. タイ

電動車（EV）の普及を推進：
日本の自動車メーカーと連携し、EVの生産拠点を国内に設置。EV充電インフラの整備も進行。
成果：交通部門の脱炭素化を図り、国内外への供給体制を強化。

3. ベトナム

太陽光発電プロジェクトの展開：
日本の技術と資金を活用し、農村部への電力供給を改善。都市部の電力需要増加にも対応。
成果：安定したエネルギー供給と環境負荷の軽減を両立。

4. フィリピン

廃棄物発電（Waste-to-Energy）技術を導入：
日本の廃棄物処理技術を活用し、都市部のゴミ問題を解決しながらエネルギーを生産。
成果：環境衛生の改善とエネルギー供給の多様化を実現。

5. オーストラリア

水素エネルギーの生産と輸出に注力：
日本との協力でグリーン水素の製造プラントを建設し、アジア市場への供給を目指す。
成果：地域全体の脱炭素化に貢献し、新たな産業を育成。

これらの取り組みは、AZEC構想の下で各国が自国の特性や課題に応じて進めている具体例です。日本の技術支援と資金提供が、アジア地域全体の脱炭素化を促進する重要な役割を果たしています。

出典：インドネシア・ムアララボ地熱発電事業とは？ | 国際環境NGO FoE Japan

出典：「金のなる木」だったタイの自動車市場で、なぜ日本車はシェアを下げているのか？ | Japan Innovation Review powered by JBpress

出典：アジアの脱炭素化を促進！「AZEC構想」（後編）日本企業の先進的な取り組み

3.AZEC構想のメリットデメリット

AZEC構想（アジア・ゼロエミッション共同体）は、アジア地域の脱炭素化を進めるための重要な枠組みです。しかし、この構想には大きな可能性と同時に、いくつかの課題も存在します。以下では、AZEC構想がもたらすメリットと、それに伴うデメリットについて整理します。

メリット

温室効果ガス排出量の削減
- AZEC構想を通じて脱炭素技術が普及し、アジア全体の温室効果ガス排出量を大幅に削減可能。
- これにより、気候変動の進行を抑え、国際的な目標（パリ協定など）への貢献が期待される。
エネルギー安全保障の向上
- 地域間の協力体制が強化され、各国がエネルギー供給の多様化を推進。
- 技術的な相互依存が進むことで、エネルギー供給の安定性が向上し、エネルギー安全保障が強まる。
新市場の創出と企業の競争力強化
- 脱炭素関連技術やサービスの需要拡大により、新たな市場が形成される。
- 日本を含む各国企業が、これらの市場を活用し国際競争力を強化するチャンスを得られる。

デメリット

高コスト負担
- 技術導入やエネルギー転換に伴う初期投資が非常に大きい。特に経済的に余裕のない国々では資金確保が難しく、構想の実現が遅れる可能性がある。
進捗の不均衡
- 参加国ごとに経済状況やエネルギー政策が異なるため、取り組みの進捗にばらつきが生じるリスクがある。
- 例えば、再生可能エネルギーへの移行が進む国と化石燃料依存が続く国との間で格差が広がる恐れ。
技術的依存のリスク
- 他国の技術や資金に過度に依存すると、自立した成長が妨げられる可能性がある。
- 長期的な視点での持続可能性が損なわれる懸念も指摘されている。

AZEC構想は、脱炭素社会の実現に向けた大きな可能性を秘めた取り組みです。しかし、コスト負担や進捗の不均衡といった課題を解決するため、各国が協力して持続可能な仕組みを構築することが求められます。

出典：アジアの脱炭素化を促進！「AZEC構想」（前編）日本はなぜ、アジアと協力するの？

出典：アジアの脱炭素化を促進！「AZEC構想」（後編）日本企業の先進的な取り組み

出典：アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)閣僚会合及びAZEC官民投資フォーラムを開催しました

出典：アジア・ゼロエミッション共同体（AZEC）首脳会合｜外務省

4.まとめ AZEC構想の意義と展望を今後に活かそう

AZEC構想は、アジア地域の脱炭素化を進めるための重要な取り組みです。日本を含む各国が協力し、技術や資金を共有することで、気候変動という世界的な課題に対応する道筋を築いています。

一方で、この構想にはコスト負担の大きさや進捗の不均衡といった課題も存在します。それぞれの国が自国の事情に合わせた対応を進めることが、成功への鍵となります。

もしAZEC構想が実現すれば、アジア全体が持続可能な経済成長と環境保全の両立を果たすモデルケースとなるでしょう。

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