FSC認証がわかる!森林保全を支える国際認証制度の魅力について解説

FSC認証は、適切に管理された森林や責任ある木材利用を保証する国際的な認証制度です。この制度は、森林資源を未来にわたって守るために、環境保全、生態系の維持、地域社会への貢献を目的としています。

違法伐採や森林破壊が深刻化する現代、FSC認証を取得した木材や紙製品は、信頼性の高い選択肢として注目されています。企業にとっては、持続可能な経営の一環として、消費者に対する環境への配慮を効果的にアピールする手段にもなります。

本記事では、FSC認証の仕組みや基準に加え、なぜ今これほど重要性が高まっているのか、その背景についてわかりやすく解説します。FSC認証が企業や環境にもたらすメリットを知り、未来に貢献する第一歩を一緒に考えてみませんか?

目次

  1. FSC認証って何?国際認証制度の仕組みを解説!

  2. なぜFSC認証が注目されるのか?気候変動や森林保全との深い関係とは

  3. FSC認証を取得するには?

  4. まとめ:FSC認証を理解して、森林保全に努めよう

1.FSC認証って何?国際認証制度の仕組みを解説!

FSC認証は、森林の持続可能な管理を目的とした国際的な認証制度です。この制度には、森林管理(FM)認証や加工・流通(CoC)認証などの種類があります。ここでは、FSC認証制度の概要とその種類について詳しく解説します。

(1)概要

FSC認証(Forest Stewardship Council)は、1993年に設立されたNPO法人で、環境団体、林業者、木材取引企業、先住民団体など、多様な関係者によって構成されています。その目的は、適切な森林管理を推進し、持続可能な森林資源の利用を支援することです。

FSC認証には、大きく2種類があります。

森林管理認証(FM認証)
適切に管理された森林であることを証明します。生物多様性、水資源、土壌保護など環境面だけでなく、社会的・経済的側面も含めた管理が審査されます。

  • 世界で:1,203カ所(認証面積176,735,471ヘクタール)

  • 日本で:35カ所(認証面積399,925ヘクタール)

加工・流通過程の管理認証(CoC認証)
認証された森林から生産された木材や製品が適切に加工・流通されていることを証明します。違法伐採された木材が混ざらないよう、サプライチェーン全体を管理します。

  • 世界で:25,723件

  • 日本で:1,101件
    ※現在113カ国で普及しています

FSC認証が注目される理由

FSC認証は単に森林を守るだけでなく、次のような広範な要素を評価し、基準を満たした製品に与えられます:

  • 環境要素:森林の生物多様性、水資源、土壌保護

  • 社会的側面:地域社会や先住民族への配慮

  • 経済的側面:持続可能な森林資源の活用

このように、FSC認証は環境保全が叫ばれる現代において、国際的に重要性が高まっています。

出典:環境省「環境ラベル等データベース_FSC認証制度(森林認証制度)」

(2)種類

森林管理認証(FM認証)

FM認証は、森林が持続可能な方法で適切に管理されているかを評価するものです。審査では次の点が重要視されます。

  • 生物多様性の保護

  • 水資源や土壌の保全

  • 生態系や景観の維持

これらの基準を満たし、森林が健全で生態学的に機能していることが確認された場合に認証が与えられます。

加工・流通過程の管理認証(CoC認証)

CoC認証は、FM認証を受けた森林から得られた木材や製品が適切に加工・流通されていることを証明するものです。以下の点が審査されます。

  • 認証を受けた木材や製品が一定割合以上含まれているか

  • 違法伐採された木材や製品が混ざっていないか

この認証により、FSC認証製品はサプライチェーン全体で持続可能な管理が徹底されていることが保証されます。

出典:環境省「環境ラベル等データベース_FSC認証制度(森林認証制度)」

2.なぜFSC認証が注目されるのか?気候変動や森林保全との深い関係とは

FSC認証が広がっている背景には、企業や消費者が重視する理由があります。ここでは、その主な理由を3つ紹介します。

(1)気候変動問題を抑えるため

森林破壊は気候変動を悪化させている大きな要因です。「IPCCの調査によると、2007年〜2016年に人類の活動から排出された二酸化炭素の13%が、農業や林業などの土地利用によって引き起こされたとされています。

FSC認証は、持続可能な森林管理を促進し、森林資源の適正利用を推進することで森林破壊を防ぎ、気候変動への対策に貢献します。

出典:Forest Stewardship Council「森を守るFSCマークとは」

(2)森林保全を図るため

FSC認証は、森林保全を図るために重視されている制度です。 森林は、二酸化炭素を吸収して地球温暖化の進行を抑えるだけでなく、水や食料、木材など生活に欠かせない重要な資源であり、さらに土砂災害を防ぐ役割も担います。

しかし、森林は破壊され続けており、2015年から2020年にかけて年間平均1020万ヘクタールが減少しているのが現状です。FSC認証は持続可能な森林管理を推進し、この問題に対処するための重要な手段として注目されています。

出典:Forest Stewardship Council「森を守るFSCマークとは」

(3)生態系を維持するため

森林破壊は生物の多様性に深刻な害を与える要因です。森林が破壊されることは野生生物の生息地を奪い、絶滅の危機に追いやります。また、野生の動植物だけでなく、森林に依存して生活する約3億5000万人の人々、特に6000万人の先住民族が森林破壊によって暮らしの場を失っていると報告もされています。

しかし、FSC認証が普及し、持続可能な森林管理が推進されることで、生態系の維持が図れるため、FSC認証は重要視されています。

出典:Forest Stewardship Council「森を守るFSCマークとは」

3.FSC認証を取得するには?

FSC認証を受けるためには、厳しい審査基準をクリアすることが必要です。ここでは、FSC認証を取得するための基準について詳しく解説します。

(1)10の原則と70の基準について

FSC認証の審査には、三本の柱と呼ばれる「環境」「社会」「経済」を基準に10の厳しい原則が設けられています。具体的な内容は、以下の通りです。

 

FSC認証における10の原則

原則1:合法性

FSCの原則・基準をはじめ、法律や国際的な取り決めを守っている

原則2:労働者の権利

森の所有や利用する権利が明確になっている

原則3:先住民族の権利

先住民の伝統的な権利を尊重している

原則4:地域社会との関係

森で暮らす人や働く人に配慮している

原則5:森林からの便益

豊かな収穫に加え、地域から愛される森である

原則6:環境

多様な生態系が保護された豊かな森である

原則7:管理計画

調査情報をもとに計画・実行している

原則8:モニタリング

森林管理において定期的なチェックを実施している

原則9:高い保護価値(HCV)

保護すべき森を守り育てている

原則10:管理活動の実施

人工的な森を作る際に十分な配慮をしている

 

これら10の原則の下には70の基準が設けられています。定められた基準レベルを順守していなければ、FSC認証は認められません。さらに、基準の下には各国の状況を考慮した約200~300もの指標が設定されています。FSC認証を受けるためには、非常に厳しい基準をクリアする必要があるため、認証を目指す企業はサプライチェーン全体での取り組みが求められます。

出典:環境省「国際的な環境認証および指標の状況」p7

出典:Forest Stewardship Council「FSCの原則と基準」P2-P3

4.まとめ:FSC認証を理解して、森林保全に努めよう

FSC認証は、持続可能な森林管理を推進する重要な仕組みです。認証を取得することで、企業は環境保全への責任を果たすだけでなく、消費者や取引先からの信頼を高めることができます。

そのため、自社のサプライチェーン全体における森林資源の利用状況を再確認し、持続可能な未来に向けた第一歩を踏み出しましょう。FSC認証を通じて、企業は社会的価値を高めるとともに、より良い環境づくりを後押しする存在となれます。

 

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