ISO14068-1とは?目的と内容を分かりやすく解説
- 2024年12月25日
- CO2算定
ISO14068-1とは、企業がカーボンニュートラルを達成し、それを証明するための国際標準規格です。企業はISO14068-1を理解することで、より効果的にカーボンニュートラルを実現し、持続可能な未来に貢献することが可能となります。
ここでは、ISO14068-1で重要な要素となるカーボンニュートラルやカーボン・オフセットについて振り返りながら、ISO14068-1とは何か、またその重要性や具体的な内容を解説します。
目次
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カーボンニュートラルとカーボン・オフセット
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ISO14068-1とは
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ISO14068-1の目的と発足の背景
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ISO14068-1の主な内容
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まとめ:ISO14068-1の知識を深め真のカーボンニュートラル達成を目指そう!
1. カーボンニュートラルとカーボン・オフセット
まずはじめに、カーボンニュートラルとカーボン・オフセットについて振り返ります。状況の変化に合わせてこれらの定義にも変化があるので、しっかりと確認することが大切です。
カーボンニュートラルとは
カーボンニュートラルとは、企業が自分たちの活動で出る温室効果ガスの排出量を計算して排出量をできるだけ減らし、削減できなかった部分をカーボン・クレジットなどで埋め合わせをした状態のことです。
企業は、自社の排出量を最小限に抑える努力をしつつ、どうしても排出される温室効果ガスについては、他の方法で帳消しにする必要があります。
出典:環境省『カーボン・オフセット ガイドライン Ver.3.0』p,7.8.(2024/03/06)
出典:環境省『カーボン・オフセット指針・ガイドライン 改訂の論点及び修正案』p,8.(2023/12/27)
カーボン・オフセットとは
カーボン・オフセットとは、企業が自分たちの活動で出る温室効果ガスの排出量を把握し、それらを減らす努力をしたうえで、どうしても減らせない分をカーボン・クレジットなどで埋め合わせをする取り組みのことです。これは、「①知って②減らして③オフセットする」の3ステップから成っています。具体的には、ボイラーの更新や太陽光発電設備の導入、森林管理のプロジェクトを通じて、これらのプロジェクトがなければ排出されていた量や吸収・除去されなかった炭素の量を測定・報告・検証します。その結果生まれる差分は、国や企業が取り引きできるように認証されます。
出典:環境省『カーボン・オフセット ガイドライン Ver.3.0』p,7.8.(2024/03/06)
出典:環境省『カーボン・オフセット指針・ガイドライン 改訂の論点及び修正案』p,6.(2023/12/27)
2. ISO14068-1とは
ここでは、ISOについて解説するとともに、ISO14068-1について見ていきます。
ISOとは
ISO(国際標準化機構)は、1946年に設立された172ヵ国の国家標準化団体から成る独立した非政府組織です。ISOの役割は、製品の製造から管理までさまざまなプロセスにおいて最善の方法を決めることで、ISOが発行する国際規格は人々の生活をより簡単に、より安全に、そして良くするものと認識されています。さらに、持続可能な未来を実現するために、常に他の組織と協力して、持続可能な開発のための規格が持つ可能性を最大限に引き出す努力をし続けています。
出典:ISO『Structure and governance - ISO Council』
ISO14068-1とは
ISO14068-1(:2023)とは、気候変動マネジメントのための基準で、カーボンニュートラル(ネットゼロ)への移行を目指すものです。これは、既存の国際規格であるISO14064-1、ISO14064-3、ISO14067など、温室効果ガス(GHG)の測定、報告、検証の規格を元に作られており、既存の規格を参考にGHG管理のための新しい標準を提供しています。
出典:ISO 14068-1:2023 - Climate change management — ISO『Part 1: Carbon neutrality』
出典:ISO『Online Browsing Platform (OBP)』(2023/11)
3. ISO14068-1の目的と発足の背景
ISO14068-1の目的とは
そもそもISO14068とは、カーボンニュートラルを達成し、それを証明するための原則や要件、ガイドラインのことで温室効果ガスの排出量(カーボンフットプリント)の測定や削減、オフセット(埋め合わせ)に焦点を当てています。これは、バリューチェーン内の直接的・間接的な温室効果ガス排出量を減らし、次にどうしても減らせない分を埋め合わせるようにする考え方です。そして、ISO14068-1は信頼できるカーボンニュートラルを目指し、科学的な方法で排出削減に取り組み、全てのプロセスでカーボンマネジメントを徹底します。
出典:ISO 14068-1:2023 - Climate change management — ISO『Part 1: Carbon neutrality』
ISO14068-1発足の背景
気候変動の差し迫った課題に対応するための会議「COP28」では、ISOも参加し気候変動対策を加速させる取り組みに積極的に関わっています。ISOは、気候変動対策を評価するための基準やベンチマークが増えていることについて話し合い、これらの基準の間の一貫性を改善するため、標準設定の枠組みや組織間の協力を強化することを推奨しました。そして、COP28で気候変動対策としてカーボンニュートラルを達成し証明するための方法「ISO14068-1」を発表しました。
4. ISO14068-1の主な内容
最後に、ISO14068-1の主な内容について見ていきます。
ISO14068-1の適用範囲
カーボンニュートラルを達成しようとしている企業は、対象とする活動やプロセスを全て考慮し、その範囲を決める必要があります。組織の場合はISO14064-1、製品の場合はISO14067に基づいて設定し、他の関連する原則や要求事項にも従う必要があります。ISO14064-1とは、組織内での温室効果ガスの排出と吸収を測定し、その結果を報告するためのルールとガイドラインです。
また、ISO14067は製品のカーボンフットプリントを計算し報告するためのルールで、この規格はLCA(ライフサイクルアセスメント)に基づいてカーボンフットプリントを計算し環境ラベルに基づいて情報を伝える方法です。
出典:ISO『ISO OBP』
出典:環境省『カーボン・オフセット指針・ガイドライン 改訂の論点及び修正案』p,14.(2023/12/27)
出典:環境省『温室効果ガス排出量の算定と検証について(ISO14064, 14065関連)』p,16.(2011/03/28)
出典:カーボンフットプリントコミュニケーションプログラム『ISO14067 の規格開発動向について(報告事項)』p,1.(2012/03/02)
ISO14068-1の目標設定
ISO14068-1では、企業がカーボンニュートラルを宣言した日から5年以内に行われた排出削減・除去やクレジット発行が認められています。そして、組織は、中期と長期の目標を設定し次のように各セクターの科学に基づいて残りの排出量を決定することが求められています。
・地球温暖化を1.5℃以内に抑えるために残りの炭素収支を守る
・国際基準に従ってエネルギーや産業の排出量および化石燃料の使用量を減らす
・2050年までにCO2をゼロにし、他の温室効果ガスの排出を大幅に減らし、除去への依存を減らす
出典:ISO『ネットゼロガイドライン』p,26.27.(2023/06/07)
出典:環境省『カーボン・オフセット指針・ガイドライン 改訂の論点及び修正案』p,32.(2023/12/27)
ISO14068-1のカーボン・クレジットの要件
ISO14068-1のカーボン・クレジットの要件として次のことが挙げられます。
・実際に排出削減または除去の効果があること
・追加的な削減であること
・測定可能であること
・長期間有効でリスクが最小化され反転時に同等の除去が保証されること
・企業はカーボンニュートラル宣言から過去5年以内に発行されたクレジットのみを使う
・カーボンクレジットは報告期間終了後12ヶ月以内に償却する
・カーボンニュートラルに使えるのは既に行った温室効果ガス排出削減や除去を示すクレジットのみ
出典:環境省『カーボン・オフセット指針・ガイドライン 改訂の論点及び修正案』p,23.(2023/12/27)
5. まとめ:ISO14068-1の知識を深め真のカーボンニュートラル達成を目指そう!
ISO14068-1とは、環境管理に関する国際標準規格の一つで、企業が環境に与える影響を評価し改善するためのガイドラインを提供しています。具体的には、カーボンニュートラルを達成して証明するためのもので、温室効果ガスの排出量の測定、削減、オフセットに焦点を当てCO2ゼロを目指します。
そして、カーボンニュートラルを目指す企業は、全ての活動やプロセスを考慮し、その範囲を決定する必要があり、組織の場合はISO14064-1、製品の場合はISO14067に基づいて設定します。ぜひ、ISO14068-1の知識を深め真のカーボンニュートラル達成を目指しましょう。