SSBJ (サステイナビリティ基準委員会)とは?概要や活動内容を紹介

 

SSBJについて、わかりやすく解説します。公益財団法人財務会計基準機構を母体として誕生したSSBJは、日本におけるサステナビリティ開示基準の開発などを行っています。このような組織が設立された背景には、国際的な動向や企業に対する投資家からの要請などが関係しています。さらにSSBJには、国際的な発信力も求められていると言えるでしょう。

本記事ではSSBJの概要や組織構成、開発中の国内基準などについて取り上げます。

目次 

  1. SSBJの概要

  2. SSBJが開発中の国内基準

  3. SSBJの国際活動

  4. まとめ:SSBJのサステナビリティ開示基準に注目しよう

1. SSBJの概要

SSBJは、財務会計基準機構の下に設立された委員会のひとつです。SSBJの概要について解説します。

SSBJとは?設立の経緯

SSBJとは「サステナビリティ基準委員会」のことで、その英語名称である「Sustainability Standards Board of Japan」の略称です。SSBJを設立したのは、一般に公正妥当と認められる会計基準及びサステナビリティ報告基準の調査研究・開発などを行う公益法人であるFASF(Financial Accounting Standards Foundation、公益財団法人財務会計基準機構)です。

日本においても国際的なサステナビリティ開示基準の開発に対して意見発信を行うことや、国内基準の開発を行うための体制整備が必要との見解が市場関係者より示されている状況を踏まえ、FASFではSSBJの設立を決議、2022年7月にSSBJが設立されました。

出典:公益財団法人 財務会計基準機構「サステナビリティ基準委員会(SSBJ)の設立及び SSBJ 設立準備委員会の設置について」p1-2(2021/12/20)

出典:公益財団法人 財務会計基準機構「財務会計基準機構(FASF)の概要」

国際的な組織との対応関係

国際的な会計基準として、IASB(International Accounting Standards Board、国際会計基準審議会)が策定するIFRS(アイファースまたはイファース、International Financial Reporting Standards:国際財務報告基準)が存在します。FASFやSSBJなど日本国内の組織とIFRSやIASBは、以下のような対応関係にあります。

基準設定主体

監督

役割

IASB

IFRS会計基準 の開発

IFRS財団

国際的な基準の開発

ISSB

IFRSサステナ ビリティ開示 基準の開発

ASBJ

日本の会計基準の開発・

国際的な会計基準開発への貢献

FASF

日本における基準の開発

SSBJ

日本のサステナビリティ開示基準の開発・

国際的なサステナビリ ティ開示基準開発への貢献

このようにSSBJは、国際的な会計基準に対応する形で、サステナビリティ開示基準の開発などを担っています。

出典:IFRS Foundation「Who we are」
出典:IFRS Foundation「International Accounting Standards Board」
出典:金融庁「サステナビリティ基準委員会(SSBJ)の概要」p5(2022/11/02)

2. SSBJが開発中の国内基準

SSBJの役割のひとつは、日本のサステナビリティ開示基準を開発することです。SSBJが開発中の国内基準について解説します。

サステナビリティ開示基準とは

近年ESG(環境・社会・ガバナンス)投資への注目が高まっており、企業へのサステナビリティ情報の開示に対する要請も強くなっています。先述のISSBをはじめ、各国・地域において、気候変動をはじめとするサステナビリティ情報の開示基準作り・義務化等に向けた動向が見られます。日本国内ではISSB基準を踏まえて、SSBJが国内サステナビリティ基準を開発中で、同基準は有価証券報告書のサステナビリティ情報記載欄に取り込まれることが検討されています。 

出典:経済産業省「信頼性のあるサステナビリティ情報の効率的な収集・集計・開示の在り方について(事務局資料②)」p2-3,12(2022/10)

SSBJサステナビリティ開示基準の公開草案

SSBJは2024年3月にサステナビリティ開示基準公開草案を公表しました。同草案は、IFRSサステナビリティ開示基準の内容を取り入れるかどうかについて、個々の論点ごとに検討を行い開発されたものとなっています。IFRS基準の内容を取り入れる場合でも、主として基準の読みやすさを優先してIFRS基準とは項目の順番を入れ替えたり、用語を言い換えたりしています。

国際基準の内容を取り入れないのは、国際基準が比較可能性を損なっている場合、企業に過度の負担をかけることが明らかであると判断される場合、国際的な基準の定めをそのままの形で取り入れないことが適切であると判断される場合などとされています。この草案については2024年7月までコメント(意見)が募集され、SSBJではそれらのコメントも踏まえ、2025年3月末までに確定基準を公表することを目標に再審議を行っています。

サステナビリティ開示基準の構成

出典:サステナビリティ基準委員会「コメントの募集及び本公開草案の概要」p4-5(2024/3/29)

出典:サステナビリティ基準委員会「公開草案「指標の報告のための算定期間に関する再提案」の公表」(2024/11/29)

公開草案に対するパブリックコメント

SSBJのサステナビリティ基準公開草案には、102の企業・団体・個人からコメントが寄せられています。たとえば気候関連財務情報開示を推進するTCFDコンソーシアムは、「IFRS基準をほぼ忠実に反映したものであり、TCFDコンソーシアムとしてはこれら公開草案の公表について歓迎する」との意見を表明しています。

日本会計士協会も同様に「IFRSサステナビリティ開示基準(ISSB 基準)との整合性を図ったものになっていることを歓迎する」とコメントしていますが、同時に「ISSB 基準との更なる整合性確保と差異明確化」「指標算定期間と報告期間の一致」「我が国のサステナビリティ開示基準の適用支援への期待」「SSBJ 基準の適用対象以外の企業に向けた簡易的な開示基準の必要性」などを要望しています。

出典:サステナビリティ基準委員会「サステナビリティ開示基準の公開草案に寄せられたコメント」
出典:サステナビリティ基準委員会「TCFDコンソーシアム」
出典:サステナビリティ基準委員会「日本会計士協会」

企業の今後の動向

金融庁では東証プライム上場企業に対して、有価証券報告書におけるSSBJ基準の適用開始を2027年3月期または2028年3月期からとすることを検討しています。いずれの場合も、当初1年間は時価総額3兆円企業(東証プライム時価総額の55%)、翌年度は1兆円以上(同74%)へ義務化、203X年にプライム全企業を対象化する予定となっています。このようなスケジュールを前提としたSSBJ基準への対応が、企業の目下の取組として必要となっています。具体的には基準の適用に向けた準備が求められます。

出典:金融庁「第2回 金融審議会 サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ 事務局説明資料」p4(2024/5/14)

出典:環境省「企業の脱炭素実現に向けた統合的な情報開示(炭素中立・循環経済・自然再興)に関する勉強会 第1回 気候関連財務情報開示に関連する最新の国内外動向」p12-13(2024/10/18)

3. SSBJの国際活動

SSBJには、国際的なサステナビリティ開示基準の開発への貢献という役割もあります。SSBJの国際活動について解説します。

ISSB等に対するSSBJからの意見発信

SSBJからは、ISSBへの意見表明も行われています。たとえばISSB「気候関連開示」公開草案に対し、「細かい要求事項が多く、細則主義的なアプローチになっているが、原則主義的なアプローチを採るべき」「開示目的から開示要求が導かれる文脈が不明確」などの意見を伝えています。

また同じくISSBの「2023年情報要請『アジェンダの優先度に関する協議』」に関して、「生物多様性・人的資本・人権・報告における統合の4トピックを高い優先度とすることに同意する」などの意見を表明しています。

出典:サステナビリティ基準委員会「ISSB等に対するSSBJからのコメント」
出典:サステナビリティ基準委員会「ISSB公開草案「IFRS S2号『気候関連開示』」に対するコメント」p2-3(2022/7/29)
出典:サステナビリティ基準委員会「ISSB情報要請(2023年)「アジェンダの優先度に関する協議」に対するコメント」p2(2023)

他のサステナビリティ基準設定主体との会合等

SSBJおよびASBJは会合などを通じ、サステナビリティ基準を開発・策定する他の団体などと積極的に交流しています。たとえば2024年には以下のような会合が行われています。

1月

カナダサステナビリティ基準審議会とモ二者間会合

2月

IFRS サステナビリティ・シンポジウム2024参加

3月

EFRAG( 欧州財務報告諮問グループ)の代表者と会合

4月

2024年上期 IFASS会議

6月

IFRS 財団バーチャル・カンファレンス2024参加

11月

オーストラリア会計基準審議会との共同会議

GRIグローバル・サステナビリティ基準審議会(GSSB)と二者間会合

11月のSSBJとGSSBの代表者による会合では、それぞれの活動の最新情報をお互いに提供するとともに、企業報告環境における最近の動向等について議論が行われました。

出典:サステナビリティ基準委員会「他のサステナビリティ基準設定主体との会合等」
出典:サステナビリティ基準委員会「サステナビリティ基準委員会(SSBJ)の代表者とGRI グローバル・サステナビリティ基準審議会(GSSB)の代表者が東京で最初の二者間会合を開催」p1(2024/11/14)

4. まとめ:SSBJのサステナビリティ開示基準に注目しよう

企業によるサステナビリティ情報開示の気運が国際的に高まる中、開示基準がどうなっていくのかに関心が集まっています。世界中でさまざまな機関がそれぞれの開示基準を提唱している中、日本でもSSBJが日本国内の開示基準開発を進めています。国際的な基準との整合性が必要である一方、日本の実情に合わない開示基準とならないようにする必要もあり、SSBJの役割は重要です。

今後SSBJが開発・発表するサステナビリティ開示基準に注目しましょう。

資料 この1冊でLCAの基礎を徹底解説資料 サプライチェーン全体のCO2排出量Scope1〜3算定の基礎を徹底解説
サプライチェーン全体のCO2排出量Scope1〜3算定の基礎を徹底解説