カーボンニュートラル実現に欠かせないCFP活用とは?各国政府の動向も解説

CFPはどのように活用されているのか、各国政府の動向も合わせてわかりやすく解説します。CO2の排出量を可視化し、カーボンニュートラル実現に欠かせないCFPは、世界各国のさまざまなシーンで利活用されています。多くの企業が自社製品のCFPを算出・公表しており、持続可能な消費と生産を継続していくために、今後もCFPが注目されることが多くなるでしょう。本記事ではCFPの概要、各国政府の動向、日本政府の取り組みについてご説明します。

目次

  1. CFPの概要

  2. CFP活用に関する各国政府の動向

  3. CFP活用に関する日本政府の取り組み

  4. まとめ:CFPを活用して、カーボンニュートラルを実現しよう!

1.CFPの概要

CFPはCO2排出量を可視化する手段です。CFPの概要について解説します。

CFPとは

CFPはCarbon Footprint of Product の略語で、直訳すると「炭素の足跡」です。製品やサービスの原材料調達から廃棄、リサイクルに⾄るまでのライフサイクル全体を通して排出されるGHG(Greenhouse Gus、温室効果ガス)の排出量をCO2排出量に換算し、製品などに表⽰した数値もしくはそれを表⽰する仕組みのことを言います。カーボンニュートラル(GHGの排出量から、植林、森林管理などによる吸収量を差し引いて、合計を実質的にゼロにすること)を実現するには個々の企業の取組だけでなく、サプライチェーン(製品の原材料調達から製造・販売までの一連の流れ)全体でGHG排出量を削減していくことが重要ですが、そのためには脱炭素・低炭素製品が選ばれるような市場にしていく必要があります。CFPはそのような市場の基盤となるものです。

出典:経済産業省、環境省「カーボンフットプリント ガイドライン」p3-4(2023/5)
出典:経済産業省「サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルに向けたカーボンフットプリントを巡る動向」p3(2023/9)

CFPが注目される背景

気候変動対策は今は世界共通の課題であり、CFPへの取り組みは環境保護の観点で重要です。CFP算出の際は製品単位でライフサイクルの各段階におけるGHG排出量をCO2 排出量に換算するため、企業はCFP算定作業を通じて排出量が多いポイントを把握して、効果的な排出削減対策を検討することができます。またCFPを継続的に算定することで、排出削減の効果をモニタリングすることも可能となります。さらにCFPの表示によって、消費者が自らの購買と気候変動への影響度合いを結びつけることで、気候変動問題に関する関⼼の啓発にもつながりますし、政府や企業の各種調達において、CO2排出量が少ない製品を優先的に選択することにも役立ちます。このような背景から、CFPは注目されています。

出典:経済産業省、環境省「カーボンフットプリント ガイドライン」p7(2023/5)

CFPの利活用シーン

元々CFPは消費者や顧客企業に対して、ラベルとして表示されることに重点が置かれていました。しかし近年ではCFPは、より幅広く利活用されています。

政府

CFPを活用した公共調達

CFPを活用した規制(表示の義務化など)

金融市場

サプライチェーン排出量の把握・開⽰要求

顧客企業

グリーン調達

CFP 開⽰/排出削減要請

消費者

脱炭素に関する企業ブランディング、製品マーケティング

このようにさまざまシーンで、CFPの利活用が進んだり検討されています。

出典:経済産業省「カーボンフットプリントレポート」p7,12(2023/5)

2.CFP活用に関する各国政府の動向

CFPは世界各国で活用されています。各国政府のCFP活用に関する動向について解説します。

イギリス

イギリス政府は、CFPを比較することで環境負荷の低い製品を消費者が選択できるようにすることを目的に、小売・金融・建設・アパレル・家電等の製品に対してCFPを算定し、ラベルを付与しています。また製品ではありませんが、住居設備・電化製品の使用・乗り物の利用を対象に、インターネット上の簡易ツールで各個人がCFPを算定しイギリスの平均値と比較することができるツールを提供し、国民にCO2排出量削減努力を促しています。

出典:環境省「『見える化』の海外事例」p1,2

フランス

フランス政府は、フランス国内大手スーパーが食品・家庭用日用薬品・健康食品・香水類等3,000商品のCFPを算定するのに際し、政府環境・エネルギー管理庁が技術・資金提供を行いました。また移動手段の代替によるコストとCO2排出量の削減を示すため、1~99kmの移動を対象に、徒歩・バイク・バス・鉄道・自動車・飛行機等の移動手段と代替交通手段を選択しコスト・CO2排出量・石油使用料の差を表示するツールをインターネットで公開しています。

出典:環境省「『見える化』の海外事例」p1,2

EU

EUはGHG削減⽬標達成のための取組の⼀環として、CFPに関する規制の制定を進めています。そのひとつが炭素国境調整(CBAM)で、2023年10月からEUへ輸出する場合は当該製品のCFPを報告することが義務付けられています。またEUでは製品や部品の移動を追跡してそれらに関するデータにアクセスできる「デジタルプロダクトパスポート(DPP︓Digital Product Passports)」の義務付けが検討されており、DPPではCFPの情報開示が求められる予定です。

出典:経済産業省「カーボンフットプリントレポート」p10-14(2023/5)

韓国

韓国では「KEITI(Korea Environmental Industry and Technology Institute、韓国環境産業技術院)」が運営する政府(環境省)公認の認証プログラム「韓国エコラベル」において、CFPの取り組みが行われています。韓国エコラベルの内「低炭素製品認証」では、環境製品宣言書の環境情報におけるCFPが最大許容炭素排出量以下の場合に同ラベルが与えられます。また韓国環境省およびKEITIは、消費者が環境に優しい商品を選択することを促すためにグリーンクレジットカードを導入しています。特定の「グリーンな」商品購入等によりポイントがたまり現金化が可能というもので、現在1500万枚以上のカードが発行されています。

出典:LCA日本フォーラム「海外のカーボンフットプリント関連情報紹介」p8-9
出典:KEITI「Eco Label & Green Consumption」
出典:経済産業省「令和3年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(環境負荷の見える化に向けたLCA(ライフサイクルアセスメント)/CFP(カーボンフットプリント)に関する調査)調査報告書」p66(2022/3/31)

3.CFP活用に関する日本政府の取り組み

日本においても、CFPの利活用について検討や推進が行われています。日本政府によるCFP活用の取り組みについて解説します。

カーボンフットプリント検討会

経済産業省では、カーボンニュートラル実現に向けサプライチェーン全体でのCO2排出削減のため、脱炭素・低炭素製品が選択されるような市場を日本でも創出することを目的に、各関係機関からメンバーを集め「カーボンフットプリント検討会」を立ち上げました。2022年9月から2023年1月まで4回の検討会を重ね、2023年3月に「CFPレポート」を公表しました。CFPレポートはCFPを巡る国内外の状況を整理するとともに、日本企業のサプライチェーン全体でのCO2排出削減と製品・産業の競争⼒強化の観点から、参照すべきルールを考察しCFP に関連する政策対応の⽅向性を明⽰するものとなっています。

出典:経済産業省「サプライチェーン全体でのカーボンニュートラルに向けたカーボンフットプリントを巡る動向」p8-10(2023/9)

カーボンフットプリントガイドライン

カーボンフットプリント検討会では、CFPレポートと同時に「カーボンフットプリントガイドライン」も発表しています。CFPの算定にあたってはISO14067や GHGProtocolなどいくつかの基準が存在しますが、それらは解釈の余地のある箇所や明記されていない事項があることから、算定を行う企業が自ら解釈・算定方法設定をする必要があります。そのため、グリーン製品の公平な選択が困難であったり、異なる取引先から異なる方法に基づいた算定を求められるといった課題も見られます。そのため「カーボンフットプリントガイドライン」においては、既存の基準では明確にされていない部分についての取組方針や、CFPの比較が想定される場合に必要となる事項も示しています。

出典:経済産業省、環境省「カーボンフットプリントガイドライン」p3-4(2023/5)

モデル事業公募

環境省は、CFPの算定や表示に取り組む企業・業界団体等を支援するモデル事業について、参加企業・業界団体等の公募を実施しています。これは企業が個別の製品・サービスのCFPを算定し、消費者に伝える取組を加速させることが目的です。参加企業は自社製品・サービスのCFP算定、CFP削減策の検討、CFP表示の実施などを行います。また業界団体の場合は、業界におけるCFP算定・表示ルールの策定、実証、発行を行います。令和5年度は21件の応募の中から5件が選定され、モデル事業にて得られた成果を踏まえ、「カーボンフットプリントガイドライン」の別冊である「CFP実践ガイド」のアップデートを予定しています。

出典:環境省「『製品・サービスのカーボンフットプリントに係るモデル事業』への参加企業・業界団体等の公募について」(2024/6/3)
          環境省「国内外の最近の動向について(報告)」p34(2024/2/14)

4.まとめ:CFPを活用して、カーボンニュートラルを実現しよう!

CFPは製品やサービスのライフサイクル全体におけるCO2排出量を可視化するものとして、世界各国で利用の機運が高まっています。各企業はCFP算定によってCO2排出量を削減するべきプロセスを特定できますし、消費者はより環境に優しい製品・サービスをCFPによって選択することができます。日本でも関係省庁によりCFP算定の参考となるガイドラインが整備されているほか、モデル事業の公募なども行われています。

各企業でもCFPを事業の見直しやグリーン購買などに活用して、カーボンニュートラル実現に向け貢献していきましょう。

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