ブルーファイナンスとは?各国や日本の事例も紹介
- 2024年03月11日
- SDGs・ESG
ブルーファイナンスとはなにか、わかりやすく解説します!持続可能な海洋経済を支える金融業務「ブルーファイナンス」が、今世界中で注目されています。海洋環境の保全や海洋資源の持続可能な開発において、ブルーファイナンスが大きな役割を担っています。
本記事ではブルーファイナンスの概要や、世界のブルーファイナンスをリードするブルーファイナンス・イニシアチブ、海外及び日本国内におけるブルーファイナンス事例について紹介します。
目次
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ブルーファイナンスの概要
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ブルーファイナンスイニシアチブについて
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ブルーファイナンスの事例
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日本におけるブルーファイナンス
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まとめ:ブルーファイナンスを活用して、持続可能な海洋活用を実現しよう!
1. ブルーファイナンスの概要
ブルーファイナンスとは、持続的な海洋経済活動に対する金融支援です。ブルーファイナンスの概要について解説します。
(1)ブルーエコノミーとは
ブルーエコノミーとは、海洋関連の持続可能な経済活動、すなわち海運、水産、海洋を利用した再生エネルギー、港湾建設、沿岸観光、沿岸インフラなどを指す概念です。
ブルーエコノミーの経済価値は年間 2 兆 5000 億ドルと推定されており、ブルーエコノミーへ取り組むことは将来世代にも大きな利益をもたらします。ブルーエコノミーの取り組みを推進するには資金が必要であるため、ブルーエコノミーを支援する「ブルーファイナンス」の果たす役割が重要となってきます。
出典:UNEP FI「Sustainable Blue Finance」
(2)ブルーファイナンスとは
ブルーファイナンスとは、金融機関がブルーエコノミーに対する支援として、融資、投資、保険提供などを行うことを指します。ブルーファイナンスの対象は、生態系の保護や再生可能エネルギーなど、持続可能な海洋利用を目指す事業です。こうした事業へのブルーファイナンスによって、持続可能な海洋利用や開発の促進が期待できます。
出典:UNEP FI「Sustainable Blue Finance」
2. ブルーファイナンス・イニシアチブとは
ブルーファイナンスは持続可能なブルーエコノミーに寄与するものでなければならないため、国際的な原則が存在しています。国際的な原則を支援する組織、ブルーファイナンス・イニシアチブについて解説します。
(1)ブルーファイナンス・イニシアチブとは
ブルーファイナンス・イニシアチブとは国連が招集した、「持続可能なブル―・エコノミー・ファイナンス原則」の実施を支援するグローバルコミュニティです。多くの金融機関がこのイニシアチブに参加し、世界の海洋や海洋資源の持続可能な利用が促進されるよう取り組んでいます。参加金融機関はブルーファイナンスに関する国際的な情報や、実践的なアドバイスを得ることができます。
出典:UNEP FI「Sustainable Blue Finance」
出典:UNEP FI「Join Us」
(2)ブルーファイナンス・イニシアチブの参加メンバー
ブルーファイナンス・イニシアチブのメンバーとなっている金融機関数は、上部団体である国連環境計画・金融イニシアチブ(以下UNEP FI)に参加している535社のうち11社です(2024年2月27日現在)。UNEP FIへ参加している日本の金融機関は14社ありますが、ブルーファイナンス・イニシアチブへ参加している金融機関はまだありません。海外企業では、フランスの大手保険会社アクサグループやオランダの銀行ラボバンク、中国の興業銀行などが、ブルーファイナンス・イニシアチブのメンバーへ名を連ねています。
(3) 持続可能なブルー・エコノミー・ファイナンス原則とは
持続可能なブルー・エコノミー・ファイナンス原則とは、銀行や保険会社などがブルーエコノミーの取り組みへ資金を提供する際の世界初の国際的な指針で、以下14の項目から構成されています。
金融機関がこの原則に従うことで、ブルーファイナンスはブルーエコノミーへの取り組みが正しく促進されるよう支援するものとなります。
(4)持続可能なブルー・エコノミー・ファイナンス原則の生まれた背景
持続可能なブルー・エコノミー・ファイナンス原則は、2017年に欧州委員会とWWF、世界資源研究所、欧州投資銀行によって開発されました。2018年には「持続可能な金融に関するハイレベルな専門家グループ」の最終報告書において、金融分野での同原則の実施が推奨されています。ブルーファイナンスでは、資金提供が海洋汚染や海洋資源の侵食など、ブルーエコノミーの実現とは逆のリスクへつながることを避けなければいけません。そのため金融機関にとって、こうした指針が必要であると考えられたのです。
出典:UNEP FI「Sustainable ocean finance」
3. ブルーファイナンスの事例
世界各地において、さまざまなブルーファイナンスが実施されています。海外のブルーファイナンス事例をご紹介します。
(1)極端な気象に対するサンゴ礁の回復資金供給
ハリケーンはカリブ海におけるサンゴ礁の喪失の主な原因であり、サンゴ礁を保護するにはハリケーン直後の修復作業が不可⽋です。保険サービスを提供するウィリス・タワーズ・ワトソン社(WTW)は、サンゴ礁のハリケーン被害に対して、ハリケーンの強度など一定の指標を支払条件とする保険(パラメトリック保険)を開発し、暴風雨後に迅速に保険金が支払われるようにしました。
出典:UNEP FI「Financing Reef Resilience to Extreme Climate Events」p1-2
(2)養殖魚粉の代替となる昆虫ベースの飼料
アメリカのボストンを本拠地にスタートアップ企業を支援しているシーアヘッド・ブルー・エンジェルス投資グループは、昆虫ベースの代替飼料を手掛けるベータハッチ株式会社(以下「ベータハッチ」)への投資を行っています。現在、家畜や養殖魚の飼料に用いられる魚の乱獲が問題となっており、ベータハッチの開発する代替飼料による解決が期待されています。出典:UNEP FI「Providing Insect-based Alternative to Aquaculture Fishmeal: Beta Hatch project」
4. 日本におけるブルーファイナンス
日本ではまだブルーファイナンスはあまり普及していませんが、ブルーファイナンスの一種である「ブルーボンド(持続可能な海洋利用のために発行される債権)」の事例が増えてきています。日本国内のブルーファイナンス事例をご紹介します。
(1)マルハニチロ株式会社
マルハニチロ株式会社は2022年に、日本国内初となるブルーボンドを発行しました。正式名称はマルハニチロ株式会社第1回無担保社債となっており、総額50億円で年0.55%の利率が設定されています。本ブルーボンドの発行により調達した資金は、環境持続型の漁業や養殖事業へ充てることとしており、プロジェクト例として「サーモン陸上養殖事業」が挙げられています。
出典:マルハニチロ株式会社「ブルーボンド」
出典:マルハニチロ株式会社「ブルーファイナンス・フレームワーク」p14(2022/9)
(2)岩手県
岩手県は2023年に、日本国内の地方公共団体として初となる「岩手県グリーン/ブルーボンド」を発行しました。本ボンドで調達された資金は、ブルー分野では漁業集落における排水設備や藻場、水産高校実習船、防波堤・護岸の整備などに充てられます。また本ボンドへの投資を表明する機関投資家は、岩手県のウェブサイト上で投資家名を紹介するとしています。発行額は50億円です。
出典:岩手県「岩手県が発行するグリーン/ブルーボンドについて」(p1-3)
(3)株式会社商船三井
株式会社商船三井は2024年1月に、海運業界として世界初となるブルーボンドを発行しました。発行額は100億円を予定しており、ガラス製繊維強化プラスチックを帆に用いた新時代の帆船「ウインドチャレンジャー」や、風力で航行するとともに、風力を使用して水素を船内生産・貯蔵、弱風時には貯蔵した水素で発電しプロペラで推進、さらに航行中に生産・貯蔵した水素を寄港時に陸上消費向けに供給するという究極のゼロエミッション船「ウインドハンター」など、風を動力とした環境に優しい船の生産などへ充当されます。
出典:株式会社商船三井「海運業界として世界初となるブルーボンドの発行を決定」(2023/12/15)
出典:商船三井グループ「環境ビジョン 2.2」p22,38(2023/4)
5. まとめ:ブルーファイナンスを活用して、持続可能な海洋活用を実現しよう!
ブルーファイナンスは、海洋関連の持続可能な経済活動に対する支援として、融資、投資、保険提供などを行うことです。ブルーファイナンスはブルーエコノミーへの取り組みを支援しますが、海洋へ悪影響を与えるプロジェクトへも資金が提供されないよう、注意しなければなりません。
そのため「ブルー・エコノミー・ファイナンス原則」が策定され、国際的な組織であるブルーファイナンス・イニシアチブによって普及促進が図られています。世界各地では多くのブルーファイナンス事例がありますが、日本国内においてもブルーファイナンスの一種であるブルーボンドが広がりを見せています。
ブルーファイナンスを活用して、持続可能な海洋資源の利用実現へ向け、革新的なプロジェクトへの取り組みを進めましょう。