LCA(ライフサイクルアセスメント)とCFP(カーボンフットプリント)は、どちらも環境負荷を評価する手法です。この記事ではLCAとCFPの定義や違い、実施のメリットについてわかりやすく紹介します。
INDEX
LCA(ライフサイクルアセスメント)について
脱炭素への取り組みを検討している企業は、LCAという用語を耳にしたことがあるのではないでしょうか。ここではLCAの定義やLCA手法による調査を実施することで企業が期待できるメリットをご紹介します。
LCAとは
LCAはLife Cycle Assessmentの略称で、ライフサイクルアセスメントと呼ばれています。ある製品またはサービスが、ライフサイクル全体(資源採取・製造・輸送・使用・廃棄・リサイクルなど)において、または特定段階において環境へどのような影響を与えているかを適切かつ定量的に評価する手法です。
出典:経済産業省『ライフサイクルアセスメント』(2004/1/30)(p.1)
LCAを実施するメリット
LCA手法により調査を実施することで製品、またはサービスの開発や設計など、主に以下に役立てることができます。
- 製品やサービスの環境改善余地の特定
- 戦略立案や優先順位の設定、製品や工程の設計または再設計における意思決定
- 環境パフォーマンスの適切な指標やそのための測定技法の選択
- 組織の環境主張や製品の環境宣言、または環境ラベリングなどによるマーケティング など
環境影響についての評価を公表することで、環境問題に関心がある消費者や取引先からの信頼を獲得できるメリットもあります。
出典:経済産業省『ライフサイクルアセスメント』(2004/1/30)(p.6)
CFP(カーボンフットプリント)について
2012年7月に本格的に開始したCFP(カーボンフットプリント)とは、どのような制度なのでしょうか。CFPの定義や実施するメリットをみていきましょう。
CFPとは
CFPはCarbon Footprint of Productsの略称で、カーボンフットプリントと呼ばれています。製品またはサービスがライフサイクル全体を通して排出する温室効果ガスをCO2に換算し、パッケージなどに分かりやすく表示する仕組みです。
企業はCO2排出量の情報を製品に分かりやすく表示することで、CO2排出量削減行動に関する気づきをサービスの消費者と共有することができます。消費者は情報を知ることで、より低炭素な消費生活へ自ら変革する機会を得ることができます。また、CFPを実施することは、サプライチェーン内の企業と協力し、更なるCO2排出量削減を推進することにも役立ちます。

CFPを実施するメリット
CFPを実施することで、企業は様々なメリットを期待することができます。
- 社会的イメージの向上
環境問題への取り組みは、企業のイメージ向上に欠かせないものになりました。企業はCFPを実施することで、取引先や投資家、消費者などにアピールすることができます。
- サプライヤーを巻き込んだCO2排出量削減
ライフサイクル全体におけるCO2排出量を見える化することで、取引先へCO2排出量削減を促しやすくなります。
- 消費者の意識改革への貢献
CFPを実施することで、企業は消費者と事業活動から排出されるCO2に関する情報を共有することになります。消費者にCO2排出量削減を意識させる効果が期待できます。

出典:経済産業省『サプライチェーン全体でのカーボンフットプリントの算定・検証等に関する背景と課題』(2022/9/22)(p.6)
LCAとCFPの違いは評価対象にある
LCAとCFPはどちらも環境への負荷を評価する手法ですが、CO2排出量算定時の評価対象に違いがあります。ここではLCAとCFPの違いについてご紹介します。
LCAにおけるCO2排出量算定時の評価対象
LCAではライフサイクル全体の環境影響を評価する際の対象が、温室効果ガスによる地球への影響だけでなく多岐に渡ります。たとえば以下の項目もLCAの評価対象になります。
- オゾン層破壊
- 資源枯渇などの地球環境問題
- 酸性化
- 砂漠化
- 生態系破壊などの地球環境問題
- 騒音や振動などの生活環境問題
出典:経済産業省『ライフサイクルアセスメント』(2004/1/30)(p.4)
CFPにおけるCO2排出量算定時の評価対象
CFPはLCA手法をベースにして環境負荷を定量的に算定しますが、温室効果ガスが気候変動に与える影響のみを評価の対象とします。CFPは工程ごとに温室効果ガス排出量を算定し、足していくことで求めることができます。温室効果ガス排出量は、活動量に排出原単位を乗じることで算定することができます。工程は基本的に5段階に分類されています。
- 原材料調達段階
- 生産段階
- 流通・販売段階
- 使用・維持管理段階
- 廃棄・リサイクル段階
出典:経済産業省『サプライチェーン全体でのカーボンフットプリントの算定・検証等に関する背景と課題』
どちらの手法が多く扱われている?
LCAとCFPのそれぞれの使用頻度は、企業の目的や業種によって異なります。ここでは、それぞれの活用状況を見ていきます。
LCAの活用状況
持続可能な開発目標の達成の推進を目的とする「一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO)」の調査によると、2019年から2023年にかけてLCAの問い合わせが多かった最も多かったのは製造業でした。次いで、コンサルタント業を含む専門・技術サービス業、そして商社を含む卸売業・小売業が続いています。2019年には、LCAの問い合わせの80%が製造業からでしたが、2023年には、製造業以外の分野からの問い合わせが約30%に増えています。このように、他の分野からの問い合わせも増えていることから、LCAは製造業だけでなく、他の分野からも注目を集めていることが分かります。
出典:一般社団法人サステナブル経営推進機構SuMPO 『企業のLCAに関するニーズについて』(2024/08/08)
CFPの活用状況
製品の環境負荷を数値で示すための規格として「ISO 14025:2006に基づくタイプⅢ環境ラベル」があります。これは、企業が自主的に取り組むプログラムで、このラベルは製品の環境負荷が低いかどうかを判断するものではなく、CFPの数値データなどを公開するものとなっています。現在、タイプⅢ環境ラベル及びCFPのプログラム運営は、SuMPOが「SuMPO環境ラベルプログラム」として運営しています。そして、プログラムでは複合機や土木・建築関連資材のような品目を中心に、2023年3月の時点で125件の有効な製品カテゴリールール(PCR)が公開されており、約700点の製品が環境ラベルを取得しています。
出典:経済産業省『カーボンフットプリント レポート』p,24.(2023/03/30 )
脱炭素経営にはLCA・CFPどちらも重要
産業界が、CO2の排出量を減らしながら成長するためには、消費者が環境に優しい製品やサービスを選ぶことが大切で、そのために、CFPが重要となります。そして、CFPの算定と削減に取り組む際には、他の環境影響を悪化させないよう注意する必要があります。そこで、LCAを活用することで、気候変動以外の環境影響も評価し、対策を講じることが重要です。CFPをきっかけにLCAに取り組むことで、企業は気候変動以外の環境問題にも対応できるようになります。
出典:経済産業省『カーボンフットプリント ガイドライン』p,7.(2023/05/25)
まとめ:LCAとCFPの違いを理解し、効果的に活用しましょう。
LCAとCFPの定義や違いなど基本的な知識についてご紹介しました。LCAとCFPとでは、評価対象に違いがあります。法人の皆さまは2つの違いを理解して、効率的に活用することで、よりよい脱炭素経営を目指していきましょう。
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