転職先が決まり、あとは会社に伝えるだけという段階になって、退職届の書き方でつまずく人は少なくありません。用紙はなにを使うのか、退職理由はどこまで書くのか、退職日は自分で決めてよいのか。調べてみても、見本ごとに書き方が違い、どれに合わせればよいのかわからなくなることがあります。
この記事を読むことで、法律で決まっていることと会社ごとの運用にゆだねられていることを切り分けて、退職届に必ず入れる項目を理解できるでしょう。
また、封筒の準備から提出後に受け取る書類までの順序についても触れています。書きながら順に確認していける手順としてお使いください。
この記事を通じて、退職届を事務手続きの一枚ではなく、次のキャリアへの区切りをつける書面として受け止めてください。

退職届をめぐる制度といまの動きを押さえる
退職届と退職願と辞表はどこがちがうか
退職届は、雇用契約を終了させる意思を会社に対して確定的に伝える書面です。これに対して退職願は、退職を認めてほしいと申し入れる書面であり、会社が承諾するまでは撤回の余地が残ると考えられています。辞表は、役員や公務員が職を辞するときに用いられる呼び方で、一般の従業員が使う場面は限られます。
厚生労働省は、労働契約の終了について、労働者から申し入れる退職と、使用者から一方的に申し入れる解雇を分けて整理しています。退職願を出して会社が承諾する流れは合意による解約に、退職届で一方的に意思を示す流れは辞職に近いものとして扱われます。どちらの形をとるかで、あとから撤回できるかどうかが変わってくると言えるでしょう。
(出典:厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」)
退職届はいつまでに出せばよいか
民法第627条第1項は、雇用の期間を定めなかったときは各当事者がいつでも解約の申入れをすることができ、申入れの日から2週間を経過することによって雇用が終了すると定めています。期間の定めのない正社員として働いているなら、法律上は退職日の2週間前までに意思を伝えれば足りると考えられます。
ただし、多くの会社は就業規則で申し出の時期を定めています。退職に関する事項は労働基準法第89条により就業規則に必ず記載する事項とされており、厚生労働省が公表しているモデル就業規則にも規程例が示されています。法律上の期限と社内の運用は別のものとして、いま自分に適用される就業規則を先に確かめてください。
(出典:e-Gov法令検索「民法」第627条/厚生労働省「モデル就業規則」令和7年12月版)
脱炭素の広がりが退職の判断に重なるとき
2025年2月に閣議決定されたGX2040ビジョン(グリーントランスフォーメーション、脱炭素と経済成長を同時に進める構造転換)では、10年間で150兆円を超える官民投資を呼び込む方針が示されています。エネルギーや素材、金融など幅広い産業で人の配置が動いており、その動きが個人の転職の時期に重なることが増えていると考えられます。
温室効果ガスの算定や開示を担う部署を新しく置く企業も増えており、アスエネが提供するようなクラウドサービスで算定の基盤を整える動きもそのひとつです。所属先が変わる前後で担う役割が大きく動くこともあるため、退職届を出す時期は、次の職場の受け入れ体制とあわせて考えてください。
(出典:経済産業省「「GX2040ビジョン 脱炭素成長型経済構造移行推進戦略 改訂」が閣議決定されました」2025年2月)
退職届の書き方で判断が分かれる点を見極める
縦書きと横書き、手書きとパソコンのどちらを選ぶか
法律は退職届の様式を定めていません。縦書きでも横書きでも、手書きでもパソコンでも、意思が明確に伝われば効力に差はないと考えられます。用紙は白のB5またはA4の便箋や無地の用紙が使われることが多く、罫線の有無も問われません。
迷ったときは、社内に定型の様式があるかを先に確かめてください。様式が用意されている会社では、それに従うのがもっとも早く、書き直しも起きにくくなります。様式がない場合は、署名だけを手書きにして本文をパソコンで作る形も広く受け入れられています。
退職理由はどこまで書くか
自分の意思で辞める場合、退職理由は「一身上の都合により」とだけ記すのが一般的です。人間関係や待遇への不満を具体的に書いても書面としての効力は変わらず、引き継ぎの場面で余計な調整を招くことがあります。
伝えたい事情があるなら、書面ではなく上司との面談で口頭にする形が向いています。ただし、会社から求められて退職する退職勧奨の場合は、自己都合と書いてしまうとあとの手続に影響することがあるため、事実に沿った書き方になっているかを確かめてください。
退職日と提出日をどう置くか
退職届に記す退職日は、上司との話し合いで合意した日を書きます。有給休暇の残日数や引き継ぎに必要な期間を考えずに日付を置くと、休暇を消化できないまま最終出社日を迎えることがあります。
提出日は、実際に書面を渡す日を書いてください。日付を空欄のまま渡すと、受理された時期があいまいになり、退職日の起算をめぐって認識のずれが生まれることがあります。
退職届の書き方をめぐる成功事例と後悔事例
確認の順序を整えて滞りなく進んだ事例
30代前半で、電機メーカーの品質保証担当からエネルギー関連企業の環境データ管理職へ移ったケースが見られます。この人は退職届を書く前に就業規則の退職に関する条項を読み、上司との面談を先に設定したと言われています。
面談で退職日の合意を取り、その場では口頭で伝えるにとどめ、後日あらためて退職届を提出しています。順序を整えたことで有給休暇の消化と引き継ぎが両立し、最終出社日までの予定が早い段階で固まったと考えられます。
書面が先に出て調整が難しくなった事例
40代で、建設会社の施工管理から再生可能エネルギーの開発職へ移ろうとしたケースでは、転職先の入社日を先に確定させ、その日程に合わせて退職届を提出したと言われています。ところが就業規則には引き継ぎに関する定めがあり、後任の配置が間に合わないことがあとからわかりました。
退職日を動かす交渉が必要になり、転職先にも入社日の変更を申し出ることになったと考えられます。書面に不備はなくても、出す順序と時期を誤ると、当事者以外にも調整の負担が及ぶことがあります。
ふたつの例からわかれ目を整理する
ふたつの例に共通するのは、退職届の文面の巧拙ではなく、書面を出す前にどれだけ確かめられていたかという点です。就業規則の退職に関する条項、上司との合意、有給休暇の残日数、引き継ぎの相手。この4つを押さえてから書き始めた人は、そのあとの調整が少なくて済む傾向にあります。
退職届は、交渉の道具ではなく合意した内容を記録する書面だと考えると、書くべきことが絞られてきます。書き方に悩む時間よりも、出す前の確認に時間を使ってください。
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退職届を書いて提出するまでの順序
記載する項目をそろえる
冒頭の表題として「退職届」、本文の書き出しに「私事」または「私儀」、退職理由として「一身上の都合により」、退職する日付、提出する日付、所属部署と氏名、宛名となる会社名と代表者名を置きます。本文は「一身上の都合により、令和○年○月○日をもって退職いたします」という一文で足ります。
氏名の下に押印を求められることがありますが、押印を必須とする法律上の定めはありません。会社の様式に押印欄がある場合はそれに従い、ない場合は署名だけでも差し支えないと考えられます。
封筒に入れて手渡す
封筒は白の無地で、中が透けない二重のものが選ばれます。表面の中央に「退職届」と書き、裏面の左下に所属部署と氏名を記してください。用紙は三つ折りにして、書き出しが封筒の裏側から見て右上に来るように入れます。
渡す相手は直属の上司が基本です。人事部へ直接持ち込むと、上司が把握していない状態で話が進み、あとの調整が難しくなることがあります。やむを得ず郵送する場合は、事前に連絡を入れたうえで簡易書留を使う方法があります。
提出後に受け取る書類を確かめる
労働基準法第22条は、労働者が退職の際に使用期間や業務の種類、賃金、退職の事由について証明書を請求した場合、使用者は遅滞なくこれを交付しなければならないと定めています。転職先から在籍の証明を求められることがあるため、必要かどうかを早めに確かめてください。
退職金を受け取る場合は、勤続年数に応じた退職所得控除が適用されます。「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば所得税などが源泉徴収されるため、原則として確定申告は必要ありません。提出していない場合は支払金額の20.42パーセントが源泉徴収され、自分で確定申告を行って精算します。
(出典:e-Gov法令検索「労働基準法」第22条/国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」令和7年4月1日現在法令等)

退職届を出したあとに伸びる人が学び直していること
在職中から学び始める
退職届を出してから学び直しを考え始めると、選考と学習が重なって進みにくくなります。退職日が決まった段階で、次の職場で求められる知識の輪郭をつかみ、在職中に手をつけられるものから始めるほうが負担は軽くなると考えられます。
脱炭素の分野では、温室効果ガスの算定や開示の枠組みが実務の共通言語になりつつあります。データの読み方を扱える人の求人も広がっており、前職の実務と結びつけやすい領域だと言えるでしょう。
公的な支援を使う
厚生労働大臣が指定する教育訓練を修了すると、費用の一部が教育訓練給付金として支給されます。給付率は訓練の種類によって異なり、一般教育訓練では経費の20パーセント(上限10万円)、専門実践教育訓練では50パーセント(年間上限40万円)が目安になります。
支給の申請は、住まいを管轄するハローワークで受け付けています。雇用保険の被保険者であった期間などの要件があるため、退職の前に対象になるかを確かめておいてください。
(出典:厚生労働省「教育訓練給付金」)
前職の経験を言葉にしておく
学び直しと同じくらい効くのが、これまでの実務を説明できる形に整えておくことです。たとえば、担当した業務の範囲、関わった人数、自分で判断した内容を書き出しておくと、面接で聞かれたときに具体的に答えられます。
退職届を書く時期は、在職中の記憶にまだ手が届く時期でもあります。会社の資料を持ち出すのではなく、自分の記憶と手元のメモから整理しておいてください。
退職届を次のキャリアの入口にする
退職届の書き方で本当に問われているのは、文面の正しさよりも、辞めるまでの段取りを自分で組み立てられるかどうかです。項目をそろえること自体は短い時間で終わりますが、就業規則を読み、上司と合意し、引き継ぎの相手を決めるまでには時間がかかります。
国は2050年のカーボンニュートラルを目標に掲げ、2040年を見据えた産業構造の転換を進めています。GX2040ビジョンが示す投資の規模から見ても、脱炭素にかかわる仕事の担い手は長く必要とされ続けると考えられます。いま所属している会社を離れることは、その流れから外れることを意味しません。
まずは、あなたの会社の就業規則を開き、退職に関する条項を読むところから始めてください。申し出の時期、提出先、引き継ぎの定めを確かめたうえで、上司との面談の日程を押さえてください。その順序で進めれば、退職届そのものは最後に整えるだけで済みます。
アスエネキャリアは、退職届を書き終えて次の一歩を選ぼうとするあなたに伴走し続けます。


